月別アーカイブ: 2010年9月

爽やかな風が吹き抜ける。

朝夕の暑さが和らぎ、
気がつけば過ごしやすい日々が訪れている。

あの重く暑い空気も去り、
爽やかな風が鼻孔を吹き抜ける。

ああ、蝉の鳴き声を聞かなくなったと思えば、
涼しげなコオロギや鈴虫の鳴き声が耳に入ってきた。

空を見上げれば雲が高くなり、
空が高く感じる。

裸で眠っていると
夜中に肌寒さを感じる。

気がつけば秋の味覚を
味わうようになっている。

9月の訪れとともに夏が終わりを告げ、
そろそろと秋がやってくる。

小さい頃は意識もしなかった季節の変わり目。
昔はいつの間にか夏になっていて、冬になっていた。
その間なんて気づきも、気になることすらしなかった。

けれど、様々な時を重ね、
季節が変わっていく小さな変化を感じるようになり、
いつの間にかそこに豊かさを感じていた。

海に行き、
川に行き、
山に行き、
旅をした夏もこうして終わっていく。

さて、こんな夏もあと何年だろう?
そんなことを毎年のように思いながら、
突然やってくる「終わり」のない最後に備えている。
その備えは、夏を全力で楽しむこと。
僕の中の少年は、そう語りかけてきた。

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いつかその時に巡りあえることをただ待ちわびて

前回までの旅日記はこちら「涙で始まる朝」

イルカ、クジラ、ウミガメなどの初めての出会いが詰まっている日もあれば、そういった出来事は何もない日もある。そして、こんな日こそ考え事をするために与えてくれた日のようだ。旅をしていると今まで経験したことのないこと、感じたことのない感情、初めての五感刺激を受けることが多い。僕は特に同じところへと繰り返し行くよりも、自分が知らない世界、物事を求めて旅に出る傾向が有るので、そういった意味では旅先で心休まることはない。心休んでないというと語弊があるかもしれないが、未知なるものにたいするワクワクと少しの不安がいつも僕を取り巻いているのだ。そういった初めての経験を前にすると五感が敏感になって、繊細に何かを感じ続ける。

送信者 小笠原

そう、そうして得た感覚を再度自分の中で整理してみる日が、旅の中には必要だ。今回の出会いでを通してクジラとの出会い、イルカと寄り添って泳ぐことを経験した今、「クジラが見る夢」という本を読み返したくなっていた。自ら経験をしたあとに読むと、どんな風に感じるのだろうか。そう、今日は本を読むための日になった。

送信者 小笠原
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朝食を7時30分から6時50分に変更してもらい、宿を後にした。港に行き、ははじま丸のチケットを購入。待合所には東京-小笠原のフェリーが偶然一緒になった友達がいた。日帰りで母島に行くらしい。

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デッキで外を眺めて、寝て。すると2時間なんてすぐにすぎていた。船内放送で母島に到着することをしる。ママヤという宿の迎えで、坂道を少し登った宿に到着。おばちゃんが迎え入れてくれた。2階の掃除が終わっていないということで、俺は1階に。見た感じ2階には風通しの良いテラスがあり気持良さそう。午前便で来た人は1泊しかしない人ばかりだった。午後便できた人は残る人もいて、厳密には船がないので残らざるをえない、結果として残ったのは俺と残り4名。

送信者 小笠原
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それにしても暑い。まあ、今日は本を読みたいので、誰もいないテラスで寝転がってクジラが見る夢を再読。2,3年ぶり。イルカと泳ぎ、クジラを見た今は、2年前のそれと沸き上がる感情の立体感が違う。もちろん、共感する部分はだいたい同じなのだけれど。そう、ここに来て思ったことは母島には何もない。父島の夏休みモードとは違った、島の日常が会った。旅行者も極端に少なかった。

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腹が減ったので、昼飯は3軒ぐらいしかない飲食店の1軒である大漁寿司へ。すると友達が食べていた。3軒しかないうちの1軒は休業日で、もう一軒は港から遠いので、この寿司やしかないのだ。せっかくなので島寿司を食べる。港にある案内所で星空スポットの情報や夕日スポット情報を集める。何と言ってもペルセウス座流星群のピークを翌日に控えているし、夕日の時に見えるグリーンフラッシュの絶好のポイントなので下調べは必須だ。星空は旧ヘリポートが良く、夕日は静沢遊歩道(サンセットシアター)が近くていいらしい。

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下見をしようと思ったけれど、暑いのでまた宿に戻る。またテラスで音楽を聴き、日陰で風に当たりながら読書の続き。ああ、気持がいい。見上げれば青い空と山が見える。本を読んでいたつもりが、いつの間にかすやすや寝ていた。そろそろ夕日を見に行くついでに散歩をしようと出かけることに。静沢の森遊歩道を歩き、森の中にある旧日本軍の大砲や弾薬庫を見学。錆び付いているけれど、カタチはそのままに残っていた。こんなところにも戦争の爪痕がひっそりと誰にも知られないで残っているんだと実感。戦争って本当に日本中のありとあらゆるところで、現実としてあったんだとつくづく思った。そして、サンセットシアターをかくにんして、鮫ヶ崎展望台へ。ここのベンチでまた読書。海が目の前で、非常に景色の良い気持いい場所。

送信者 小笠原
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また、本を読み寝る。夕日の時間が近くなったので、おもむろにサンセットシアターへ歩いていく。坂道をえっちらおっちら。西に拓けていて、水平線がキレイに見える。さらに今日は水平線付近に雲が少なくグリーンフラッシュを見る条件としては適している。1人で、夕暮れの空を見ながらボーッとしていた。本当にこんな時間は貴重だなと思う。周りに生い茂る木々も南国風で、改めて南の島にいることを感じた。

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だんだん太陽の高度は下がり、空はオレンジ色に染められていった。水平線のちょっと上に横長の雲があったけれど、その雲があるために、太陽が沈んでいく様子が実感できる。ああ、もうすぐ沈んでいく。水平線にキレイに沈む夕日を見るのは久しぶりだなと感じながら、前回は奄美大島だったかなと思い出していた。そして、水平線に徐々に太陽が沈んでいく。半分が沈み、三分の二。おお、今日も一日が終わっていく。水平線にたいようが 沈みかけた瞬間。

「グリーンフラッシュだっ。」
僕は思わず叫んでいた。

「あっ、グリーンフラッシュだっ」
自分でも、自分の発せられた声を耳で聞いて驚いた。

でも、緑閃光はあっという間の出来事だった。本当に「あっ」と声を出している間の出来事だった。僕は見とれていてカメラに残せるはずもなかった。周りに2人いた人が、「ああ、ちょっと緑に光りましたね」と冷静な声で言った。僕は、我に返った。

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本当に太陽が緑に光った。写真では見たことがあったけれど、そんなものより遥かに驚いた。黄緑色の閃光が発せられた。まさにそんな感じ。僕はただ驚いていた。気がつくと写真なんてとってやしなかった。でも、良かった。見た瞬間の緑の光、そして自分が無意識に発した言葉に驚いた時の感覚が今も体に染み付いている。そして、その時はあまりにも生々しく僕の体に染み付いている。幸せとか喜びと言うよりも、唖然として、びっくりしていたと言う方がその時の状況を正確に表している気がする。

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自然ってのは本当に驚くべき世界を僕らに魅せてくれる。彼らは僕らが見る見ないに関わらず、ただあるがままにしているだけなのだけれど。僕はそんな自然と言うものが好きだ。頭がちょっと混乱する程の驚きがあった。その名残りを感じつつ、宿へと戻った。同宿の男は4人だった。初めまして、ということで少し話して飯を食った。料理はボリュームもありうまかった。飯を食べると、僕は旧ヘリポートまで歩いていった。途中から街灯が完全になくなり、真っ暗な世界が訪れた。ヘッドライトも消して、ぶらぶら歩き、空を見上げる。すると、さぁーっと星がいくつか流れていった。美幸の浜へ行く曲がり角を入ったところにヘリポートはあった。

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明日のための偵察を終え、宿へと戻った。そして、5,6年ぶりぐらいにする明日のスキューバダイビングにドキドキしながら眠りについた。

高水三山トレイル

常にアクセスが便利なトレイルを探しています。あっ、ウソついた。探していると書くと、自分の行動が伴っていないといけない。ないかなーと思っているレベル。まあ、何はともあれ、理想はこんな条件のトレイル。

1.家から2時間以内で行ける
2.電車を降りてすぐにトレイルに入れる(バスに乗る必要がない)
3.2時間から3時間のコース
4.アップダウンがあって、かつ尾根の平坦な登山道もある。
5.人が多くない

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さて、今回は高水三山。上記の全ての項目が当てはまる素敵なトレイル。こんな理由から、一般登山でも手軽でそこそこ人気の山(だと思う)。ただ、夏の時期なのでそこまで人は多くなかった。3、40人とすれ違ったかな。

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今回は久しぶりのトレイルランニングで、おそらく富士山登山競争以来。最近はスイムばっかりで走ることもなかった。そこで、先日買ったトレランシューズを試し履きする意味も含めて軽く走ることに。ついでにSKINSのパワーソックスも試してみた。

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まずは、家を10時ぐらいに出る。スーパーでアクエリアス2リットルとおにぎり2つ購入。家にあったカロリーメイトやSOYJOY、ジェルもカバンに。食料も揃え中央線に乗り軍畑駅へ。到着は11時50分。アップの意味を込めて、軽く走り始める。地図と標識を見ながら道路を走ること15分から20分で、登山口に到着。道路は日射しが強いので、早くトレイルに入りたかった。

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登山口は夏だけあって雑草が生い茂る。こんな時にパワーソックスを履いていて良かった。ハーフパンツだけだと雑草でふくらはぎがこすれるのが問題だった。しかし、パワーソックスを履いていれば、雑草問題は避けられるし、さほど暑くもない。今日は履いてきて大正解だった。

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汗をかきながら、暑いなーと思っていたら、小さな滝があった。落差が2メートル程だから滝というほどでもないかな。ここで、顔を洗い、頭から水をかぶる。うーーん、気持がいい。こういう瞬間が最高だ。さてさて、登りは続きます。軍畑駅が標高200メートルちょっとなので、だいたい標高差500メートルの登り。登りは早歩きぐらい。標識がかなりしっかり出ているので、地図やコンパスの出番は少ないです。初心者の山歩きにもいいコースだと思う。

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そして、高水山不動尊(常福院)に到着。高水山頂のちょっと手前にあるお寺。手を合わせる。そして、また少しだけ登り、この辺りでは登山者がお昼を食べていた。人も多かったので、するするっと抜けていく。そして岩茸石山へ。ここへはすぐだった。さらに頂上は高水三山の3つの中では一番眺めが良かった。ベンチもいくつかあったし広い場所なので、ランチにはベストかも。せっかくなら、高水山の山頂より静かで眺めも良いので、ここで休むのが良い気がする。

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俺もここで一休み。おにぎりとSOYJOYを食べる。汗をたっぷりかいて、老廃物も出て、冷たいアクエリアスがうまい。さらに、深呼吸をして山々を見ていると清々しい気持になる。ここで登りも終わりなので、リラックスモード。一休みを終えて、下り。惣岳山を目指す。一カ所登りがキツいところがあったけど、短いし、その他は本当に走りやすいトレイル。走るのを楽しむのはここのエリア。
惣岳山頂は景色も良くないので、ほとんどスルー。そして下山。トータルで1時間50分。たぶん、大会とかのレベルで頑張って走ったら1時間30分強ぐらいじゃないかな。

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今回の主目的である新しいモントレイルのシューズ(マウンテンマゾヒスト)の履き心地だけど、最高でした。今までの3足履いてきたシューズよりも安定感が良く、さらに軽い。サイズもちょうど良かった。同じサイズがどこかの店で安売りしていれば、もう一足買っておいてもいいかも。そんな楽しい週末のトレイルでした。こうして、1つずつ自分のトレイルコースが増えていくのが楽しいです。


かなり便利なコース紹介。
http://www.omekanko.gr.jp/hiking/takamizusan/index.htm

【高水三山トレイル 概要】

【日時】2010/9/5(日) 晴れ
【会場】高水山(759m)、岩茸石山(793m)、惣岳山(756m)
【行き】
阿佐ヶ谷下車→JR軍畑駅
【帰り】
御嶽駅→阿佐ヶ谷→千駄ヶ谷→水泳
【タイム】約1時間50分 (参考コースタイム4時間10分)

軍畑駅:11時50分
高水山(759m):12時40分
岩茸石山(793m):12時52分
惣岳山(756m):13時12分
御嶽駅:13時40分

◆装備

□時計
□デジタルカメラ LUMIX FT2のコンデジ
□補給食 カロリーメイト、SOYJOY、おにぎり2つ、キャラメル、パワーバー
□携帯電話
□熊よけの鈴(なくても良い)
□レスキューセット
□保険証
□コンパス シルバ(SILVA)コンパスNo.3R
□ペンとノート
□地図
□お金
□suica(電車移動をスムーズに行うためチャージをしておく)
□音楽:iPod
□本

◆服装
□帽子:ランニングキャップ(mello’s)
□シャツ:Tシャツ(北丹沢山岳耐久レースでもらった速乾性)
□パンツ:シルキードライボクサーブリーフ(ハリヌキ)Mサイズ(ユニクロ)
□ふくらはぎ用スパッツ:SKINSパワーソックスSサイズ
□短パン:速乾性ハーフパンツ(ユニクロ)
□靴下:コンフォートサポートショートソックス(2足組)A 25-27cm(ユニクロ)(靴下の丈がもう少し長い方が足首も隠れて良い)
□靴:マウンテンマゾヒスト26.5cm(モントレイル)
□トレランバッグ:キャメルバッグ
□ハイドレーション;水にアクエリアス2リットル
□タオル
□アミノ酸;アミノバイタル顆粒

◆念のため装備
□長そで緑のシャツ(LoweAlpine)
□レインウェア (Penfield)
□スパッツ:ロングスパッツ(4DM)
□サポーター(4DM)
着替え
□靴下
□シャツ
□パンツ
□ズボン モンベルの薄いパンツ

水着
□水着セット一式(走り終わった後に泳ぎにいったため)


探していた場所を見つけた喜び(高畑山と倉岳山トレイルコース)
http://teratown.com/blog/2010/05/31/auaeieoaioaeeaouyeyiyyeyy/

学び舎

夏の暑さも盛りを過ぎたからか、夜風に当たりながら考え事をしたり、物思いに耽ることがしばしばある。きっかけは先日芸大時代の友達から電話をもらったことが理由のひとつかもしれない。

そんな時に自分と言う人間がどのように作り上げられてきたかを考えると、生まれ持った性格や両親、小さい頃の先生に大きな影響を受けた。そして、その時に経験したこと。ただ、これらは途轍もない大きな影響を受けているけれど、自分が意志を持って行動をする前のことである。

僕が意志を持って、飛び込んでいった世界を考えると、大学以降だ。そんな世界、言い換えれば僕に取っての学び舎といえば、東京芸大だった。そして昨年のSWITCH。なんといっても旅である。走ることなどの時間も考えを巡らすには非常に貴重な時間だけれど、これは1人のことであり、学び舎とは言いがたい。

芸大であり、SWITCHであり、旅は僕にとってかけがえのない場所で、こんな場所に出会えて良かったなと思う。どれをとっても出会っていなかったかもしれない場所だと考えると、本当に巡りあいというものに感謝する。

昔はアートとか芸術なんて全く興味がなく、否定していたけれど、人間の脳とか意識に興味を持ち、茂木さんの本に出会い、授業が芸大であることを知って芸大に飛び込んだ。他大学の授業に潜るなんて初めてだし、芸大と言う少しばかり異色の空間だ。初めての日に校門まで来て、ビビって一回引き返した。でも、せっかくだし殺されるわけでもないから、行ってみようと教室に行った。そうしたらその教室には3人しかいなかった。どうしようもない。潜りがバレる。でも、ここまで来たら何でもいいや。吹っ切れた。そして授業は始まった。結果的に人が少ないからこそ、芸大のみんなとも仲良くなれ、色々な議論を繰り返すことが出来た。授業後の飲み会も非常に思い出深い時間だった。そして、アートとか芸術に興味が非常に強くなった。大きな影響を受けた学び舎。

SWITCHのクリエイティブライティングも興味はあったけれど授業料が高かったのもあって1年目の開催は申し込みを止めている。そして、2回目で、申し込みをすることにした。運良く選考課題の文章が通りクリエイティブライティングに通うことが出来た。色々な仲間がいて、毎回真剣に自分自身と向き合い、そして文章を書き、当日はみんなの前で朗読し、新井さんに講評をもらう。なんとも精神的に疲れる時間だったけれど、密度の濃い時間を過ごすことが出来た。実は3年目の今年は開催されていない。去年偶然参加できて本当に運が良かった。

最後に旅。昔から海外には興味があったけれど、ビビリな性格なので1人で飛び出すことはなかっただろう。けれど大学1年の時に友達3人とトルコに行くことになった。これも偶然だ。大学4年にこんな機会があっても遅すぎる。1年生にこんな機会があったから大学という時間のある時にいろいろな場所に行き、いろいろな価値観や文化や人に会い衝撃を受け考えることが出来た。毎回想像もしないテーマの授業が突然始まるのが旅だった。

こういった場所はその時が過ぎてから本当にありがたかったと気づく。そしてまた、偶然巡り会うであろう学び舎に身を置きたいと思う。

そう、帰る場所が産まれた場所であるならば、学び舎は人生の節目で立ち寄りたくなる大切な場所なんだと思う。そんなかけがえのない場所。

こうした学び舎にいくつか身を置いてくると、いつかはそんな学び舎を自分でもひらきたいと思うようになる。

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今日は表参道にあるSWITCH編集部地下にあるRainy day book cafeに行った。去年のクリエイティブライティングを共にした5人ぐらいの仲間や新井さん、絵描きの下田さんとも久しぶりに話せて、こんな文章を書きたくなった。

涙で始まる朝

前回までの小笠原旅日記はコチラ「イルカよ、クジラよ、ウミガメよ。」

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朝、目を覚ますと、今日も空は高く爽やかな風が流れていた。歯を磨き、朝食まで1時間あまり外をブラブラすることにした。島の朝は心地よい。爽やかな朝の空気が体中にゆき渡り、体が軽やかになっていく。すると、昨夜に続いて浜でウミガメが産卵しているという話しを聞く。おかしい。ウミガメは普通夜の間に産卵して、海へと帰っていくはずである。時間を間違ってしまったウミガメなのだろうか、海洋センター前の大村海岸まで歩く。

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すると、母ガメが穴を掘り産卵しているところだった。こんな明るい時間に産卵とは、どうしたのだろうか。産卵中は無防備だから他の動物から見つかりづらい夜を選ぶはずだ。この母カメは、何か落ち着かない様子で、産卵し回りを気にしているようだった。でも、自分が危険にさらされることよりも、次の命へとつなぐために授かった卵をしっかりと孵すことをまっとうしようとしている様に映った。

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彼女はうなるような低い声を出しながら、涙を流していた。一筋の涙と言うよりは、苦しさをなんとか耐えている涙。どうしてもやり遂げなければならないことを、なんとか成し遂げようと全身全霊をかけているようだった。目の粘膜が解けているのではないのかと思う程の粘り気のある涙が少しずつ止めどなく流れていた。そんな姿を見て、母性の子孫を残すことへの本能的な執着心を感じた。そして、昔、思ったことを思い出した。お産は冒険だと言うことを。

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彼女は空が明るくなってしまったことを強く後悔するかのように、落ち着かない様子で両足で卵に砂をかけ、急ぎ足で海へと帰っていった。

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7時30分に朝食を食べ、今日はsea-tacというマリンショップのドルフィンスイムツアーに参加する。昨日のように荷物を準備して、コンタクトをつけて、出陣。今日も出港するとすぐにイルカに遭遇した。本当に運がいい。そして、小笠原にはイルカが多い。昨日すでにイルカと泳いでいるので、感覚は掴めている。初めての日よりも、一日寝かせてまたやるとその暗黙値が体にしみ込んでいる。そっと海に入り、イルカに寄り添って泳ぐ。彼らを驚かせないように、ゆっくりと近づき、目でお互いに合図をして泳ぐ。

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やはりイルカと人間はコミュニケーションできるんじゃないかと思う程。イルカは楽しそうにじゃれ合って泳いでいる。僕の真後ろに回って、僕を挟むようにして3頭のイルカがすり抜けていく。一瞬ヒヤッと怖さも感じたが、ただ彼らはじゃれているだけだ。僕も身構えずにいるとまた一緒に泳いだ。しばらくすると、彼らは飽きてしまったのか、かるーく尾びれをキックして遠くへと泳いでいった。

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次のイルカを探しながら船でさまよっていると、イルカの群れがやってきた。次の種類のイルカは一緒に泳げないので船の上から見ているだけ。けれど、かれらも人懐っこく船の真横について並走したり、船の下をくぐってみたりと遊んでいる。その後、またイルカが現れ、海の中へ。次のイルカは人間に対して特に意識することなく自分たちの海の世界を過ごしていた。人間を恐れることもなく、興味を持つこともなく。僕はそんなイルカ達をぼんやりと水中で眺めていた。そして、惚れ惚れとした。あの、無駄のない体と泳ぎは本当に海の中を泳ぐ最も美しい生き物に見えた。

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何だかんだいって、お昼になっていた。今日も波が低いキャベツビーチに停泊して昼食。パンを食べて、水の中へ。カラフルな魚達と一緒に泳いだり、昔沈没した船の残骸を見たりして楽しんだ。ぷかぷかとぼーっとしながら海に浮かんでみたり、インストラクターの方と一緒に素潜りで潜水してみたり、水と遊んだ。別にイルカと泳ぐわけでもなく、水中写真を撮るわけでもなく、熱帯魚やサンゴを見るわけでもない。ただ、海に浮かび、リラックスして水と遊ぶ。これが最も水と親しむ方法である気がした。

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続いて南島に。昨日も上陸した本当に綺麗な島。しかし、今日は沖縄に来ていた台風の影響で海のうねりがあった。そこで、船を接岸できないと言うことで、海を泳いで南島に上陸することに。けっこううねりがあったので、ドキドキした。けれど、すぐに湾の中に入って奥へと進むので、波に流されるリスクと言うのはほとんどなかった。うなりのリズムを読みながら、岸壁へと泳いだ。こうした経験はちょっとした冒険のようなワクワク感があって楽しい。

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そして、南島を歩いた。太陽の日射しが強く、タオルで体を覆っていた。浜には子ガメの死骸があった。海まで辿り着けずに、浜でその時を迎えたのだろう。甲羅と皮膚だけ残っていた。南島を見終わるとまた、泳いで船に向かう。次はまた違う場所から泳いで船に戻る。大きなうねりの波を避け、落ち着いたところを見計らってみんなでいっせいに泳ぎはじめた。水をかきわけ、かきわけ、船のタラップに足を架ける。さて、今日の海上生活も終わり。17時前に港に戻り、宿へと帰った。いつものように水着とシュノーケルセットを洗う。

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今夜は父島最後の夜。明日の朝に母島へと渡るのだ。最後だし、夕日を見に行こうと思い、宿からあるいて30分程の高台にあるウェザーステーションへ。登っていくと、本当に眺めのいい場所に三日月山展望台が作られていた。人気のスポットらしく、たくさんの人が集まってきていた。良さそうな場所を確保して、音楽を聴きながら、暮れ行く時間を過ごした。陽光が海の上に真っすぐな道を造っていた。その道の先に太陽が沈んでいった。沈む瞬間に緑色に光るグリーンフラッシュを期待したが、今日はお預けだった。母島では毎日グリーンフラッシュを求めて、夕日を眺めようと思った。

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宿へと戻り、夕食。一階の狭い食堂で、おかずとご飯をお盆にのせ、ひとり夕食をとった。網戸の先からは虫の声が聞こえてきた。食べ終わり、今日は盆踊りの練習があると言うことで公園に。父島では毎年の盆踊りが有名で、島民が1年間で最も楽しみにしている行事のようだった。花火もあがるし、最終日にはアンコールがかかるほど。そんなに盛り上がる盆踊りだから練習もある。こりゃすごい。本番の日には母島にいるため、参加できない。そこで、練習だけでもと思い、足を運んだ。小さな子どもから、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、そして毎年夏に小笠原に来ている旅人、みんな真剣に練習をしていた。本当に盆踊りがこの島に根付いている、そして真剣に取り組んでいるんだなーと実感。

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練習が終わると、同宿の旅人と飲みに行くことに。最後の日だしと言うことで、4、5人で連れ立った。小笠原では地元の酒を造ろうとラム酒を作っている。試しに飲んでみた。特別な味と言う気もしなかったが、やはり旅先ではその土地の物を飲み食いすると、ああ、来たんだなと実感する。その時は感じなくても、何年かたった後に、同じ匂いを嗅いで旅の出来事を思い出すことが有る。五感の記憶はそうやって蘇り、日々の生活にちょっとした喜びを与えてくれる。

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2人は帰り、残った3人で青灯台という浜の近くの公園で続きを。小笠原の空の下で、偶然同い年だった男3人いろいろなことを語った。ああ、旅をこれからもするだろう、そんな風に思いながら夜は更けていった。