日別アーカイブ: 2010/9/21 火曜日

やっぱり夏はママチャリを我武者らに漕いでこそ

前回までの小笠原旅日記はこちら「海の中の世界と星の流れる世界、僕はその間をこうして旅をしてる。」

夏になると我武者らにママチャリを漕いでいた。一昨年は大分の中津昨年は岩手の遠野、そして今年は長野の木崎湖とここ小笠原諸島の母島だ。

汗をダラダラ流しながら、青い空と入道雲の下を我武者らに自転車を漕ぐ。なんとも楽しい瞬間だ。あぜ道や堤防を走っているとそれだけで、夏を感じてワクワクしてくる。さすがに、「今年も夏はママチャリを漕ぎたい!」と思っているわけではないけれど、振り返ってみると結果的に夏はママチャリを我武者ら漕いでいた。

送信者 小笠原

そう、小笠原の最後の日がやってきた。小笠原滞在は今日が実質的に最後なのだけれど、最後な気がしない。なぜなら、今日を含めてまだ旅は3日続くから。明日の朝に母島から父島に戻り、午後の便で父島からまるまる1日以上かけて東京(竹芝)へと戻る。そんな理由からまだ旅の最後だと感じないのだけれど。

送信者 小笠原

最後の日に何をしようか。何もすることはないのだけれど、北港ではウミガメと泳げるということでとりあえず北港へ。行く手段としては、レンタルバイク、有償運送、自転車、歩きの4つ。バイクのレンタルは既に借りられず。有償運送はバスのような感じでお願いすれば特定の時間に乗せていってくれるサービス。これもよかったのだけれど、時間に縛られるのでパス。そこで自転車を借りることに。同じ宿のロンゲの兄ちゃんと2人でチャリに乗って北港を目指す。

送信者 小笠原

足ヒレやシュノーケルを持ちさあ出発。といいつつ暑いので、まずは商店へ。水を2リットルと昼飯のパンを3つほど購入。小笠原ではパンを凍らせて売っている。自然解凍した頃が食べごろだとか。さて、ガソリン満タン、準備万端。チャリで出発です。母島に道は少ないから迷うことはないのだけれど、北港へはひたすら上り坂を越え、下り、また登る。そんな繰り返し。9時ぐらいに出たけれど、太陽は燦々と降り注ぎ暑い。水分をとり、悲鳴を上げる太腿に鞭を打ち、汗を流す。でも、坂道を漕ぎ続けることも出来るはずなく、手で押して登った。

送信者 小笠原

途中、新夕日丘だったり、眺めが良い場所が何カ所かあったので、そんな所では深呼吸をして一休み。2人で「いったいいつ着くのだろうか」と不安になりながら、ただ北港を目指す。後半は下り坂が気持よくなって、スイスイ進む。そんな時も帰りが辛いだろうなーと、苦笑いをしながら話していた。自転車を漕ぎはじめて1時間半程で北港に到着。最後は思っていたよりも突然訪れた。

東屋がひとつあり、その先に海が広がっていた。自転車をおき、東屋に到着すると、1人の同年代ぐらいの女性が座っていた。旅人にしてはこの島に馴染んでいるなと思った。彼女はウクレレの練習を1人でしていたのだ。誰もいないところで練習したかっただろうに、邪魔をしてしまったなと思いながらも色々と話した。彼女は4年前にこの島に来たという。小笠原のレンジャーの仕事に応募してここにやってきたのだという。週の半分はレンジャーをして、残りはバイトをしたりこんな風にゆったりとした時間を過ごしているという。最長で5年契約らしく、来年もここにいるかは分からないと。本当は北海道に行きたいから、募集があれば北海道のレンジャーに応募して行きたいと、爽やかな笑顔で語っていた。肩肘張らずに素敵な生き方をしているなーと感じた。

送信者 小笠原

さて、僕らは自転車で辛かったと話すと、有償運送の方が自転車も乗せて帰ってくれるかもと教えてくれた。渡りに船。ぜひ、そうして帰りたいというと有償運送の方が知りあいらしく、頼んでくれた。ラッキー。これで思う存分海を楽しめる。足ヒレとシュノーケルをつけて海へ。海はもちろん綺麗なのだが、サンゴも魚もいない。いないわけでもないが、よく見る魚がいるだけだ。噂と違うと思いながら、沖へと泳いで行った。沖へ出て、少し曲がったところに大沢海岸が広がっている。とりあえず、そこまで行ってみることに。途中、潜水して岩陰を見てみたけれど、鮮やかな世界は広がっていなかった。

送信者 小笠原

とりあえず大沢海岸に上陸。「何もないっすね。俺たち騙されたんですかね。」と笑いながら話した。もうちょっと探そうということで、また海に。北港に帰りながら海の中を見ていると、ウミガメ発見。青く包まれた世界を優雅に泳いでいた。泳ぐのが得意そうな体系じゃないと思うのに、僕らなんかよりも遥かに水と馴染んで沖へ沖へと泳いで行った。

送信者 小笠原

そろそろ帰りの時間も近いので、戻ることに。するとスコールが降って来た。海でこんなに雨に打たれるのも初めてかもしれない。海の上にぷかぷかと浮かびながら、雨に打たれた。どうせ海の中だから、雨で濡れることを気にする必要もなく、雨に対してちょっと優越感を感じながらひとときを楽しんだ。すぐに雨はやみ、陸へと上がる。音楽を聴き、本を読み、しばし時間を過ごす。

送信者 小笠原

有償運送が来て、自転車を乗せて宿まで帰った。車ってこんなに便利なのかと改めて感じながら。少し休んでから、またお出かけ。自転車があると気軽に何処へでも行ける。石次郎海岸は静かで本を読むのによいと言うので、行ってみることに。小さなビーチで誰もいない静かな場所だった。完全に誰もいない浜で岩の影に座りしばし読書。波が寄せては返す音を聞きながら、穏やかな時間を過ごす。場所を変えようと思い、お気に入りの鮫ヶ崎展望台へ。ここでも東屋で寝転がりながら通り抜ける風を感じて読書。寝返りを打つ様に、たまに海を見に立ち上がり、また本を読む。そんな繰り返し。

送信者 小笠原

「クジラが見る夢」池澤夏樹を読み終え、「「愛」という言葉を口にできなかった二人のために」沢木耕太郎を読みはじめた。沢木さんの本も非常に好きで、ちょくちょく読んでいる。この本は沢木さんが見た映画について書かれた本で、各映画について数ページでまとめられていた。たった数ページで細かな映画の流れは書かれているわけではないのに、その映画に関して非常に興味を持つような表現だった。ある映画について数ページで書かれているのだが、その映画というよりも、この本の数ページがまた別の映画のような世界を作り出していた。数ページごとに見応えのある映画を見ているようで、いっきに何十本もの映画を見たかのような充足感に満たされた。

のめり込んで読んでいると、もう夕暮れだ。僕には行かねばならぬ場所がある。毎日通っているサンセットシアターだ。自転車を走らせて向かう。しかし、今日も水平線沿いに雲がかかっておりグリーンフラッシュは難しそうだった。沈み行く太陽を見ていると、空がとても穏やかで美しい色に染まっていた。こういった原色ではない混ざり合った「和の色合い」は昔から日本人が好んできたような世界観だ。そんな空に僕が最も好きな三日月よりも細い、二日月が輝いていた。

送信者 小笠原

宿に戻り、今夜もたっぷりと夕食を頂く。それから、南洋踊りという太平洋の島々を起源とするような踊りをやっていると言うので、出かけてみることに。20人ぐらいの人が腰に巻き付け、首から飾りを下げて踊っていた。仲間に入れてもらい、僕もシャツを脱ぎ、首から飾りを下げ、腰に巻き踊りはじめた。この島の酋長が教えてくださった。パーツパーツ事の振りを身につけ、最後に全体を通して踊る。ここも暖かい島だと思えるような、陽気な踊り。僕も体を動かしていると楽しくなり、全力で踊ったら。汗が滝の様に流れた。

送信者 小笠原

それから、ユースホステルで行われる母島の歌手のライブを聴きに行く。あんまり興味はなかったけれど、同じ宿の人たちと流れで。ギャグかと思うような歌で、すぐに抜け出したくなったけれど無理で、1時間程聞く。ライブも終わり、宿へと戻る。同宿の4人とテラスで飲みながら話しをする。お互いの背景を知らない人けれど、旅と言う共通項この同じ時を共にしたという不思議なつながりの仲間。そんな人が集まると意外とその人の本音が出たりする。仲が良すぎると照れてしまっていえないことや、改まって話さないことも、旅先の夜では口をついたりする。そんな旅先での会話が好きだ。

送信者 小笠原

みんな眠たくなり、眠りについた。

翌日は皆、母島丸で父島に向かった。父島に残るもの、そのまま東京(竹芝)へ帰るもの。旅は出会いと分かれ。父島に到着すると、スーパーで買い出し。パンや飲み物。お弁当屋ではオムライスを買って、小笠原丸に乗り込む。お盆の便ということもあって、すごい人。人。人。小笠原の何処にこんなにも

送信者 小笠原

今回の小笠原には友達が何人かいたけれど、それぞれ好き勝手に旅しにきているのだからあえて連絡をとるなんて野暮なことはしなかった。東京への船のデッキで空を眺めていたら、友達が横切った。「おお、つい口をついた」やっとこんなところで友達にあった。海を眺めながらお互いの旅の話しや最近の出来事をを話すと、数時間がすぎていた。日も落ちて、それぞれ寝床に戻って行った。

送信者 小笠原

寝て起きて、本を読み、海を眺め、音楽を聴く。25時間なんてあっという間。朝になり、デッキにゴザを敷いてボーッとしていると、南国荘で同じだった女性が通り過ぎる。一緒にいた友達も父島の盆踊りで知り合ったらしく、3人で父島と母島のそれぞれの旅を話した。彼女は3回目の小笠原であった。まだまだ話したりないけれど、すぐに東京湾に来てしまった。「来年も来るっちゃろ?」と岡山弁でいわれると、僕も友達もなぜだか小笠原に来年も行きたいと思ってしまうが、実際に小笠原の地にいるかは分からない。

最後に竹芝に着いても不思議な感覚だった。遠い島から帰ってくる時はだいたい飛行機なのに、船を降りたらいきなり東京。なんだか、ワープしたような感じだった。普通なら、船に乗って、飛行機を乗り継いで東京に戻る。それがいきなり東京。そんな突然訪れた東京に不思議な感覚を覚えつつ、小笠原の旅を終えた。