いつかその時に巡りあえることをただ待ちわびて

前回までの旅日記はこちら「涙で始まる朝」

イルカ、クジラ、ウミガメなどの初めての出会いが詰まっている日もあれば、そういった出来事は何もない日もある。そして、こんな日こそ考え事をするために与えてくれた日のようだ。旅をしていると今まで経験したことのないこと、感じたことのない感情、初めての五感刺激を受けることが多い。僕は特に同じところへと繰り返し行くよりも、自分が知らない世界、物事を求めて旅に出る傾向が有るので、そういった意味では旅先で心休まることはない。心休んでないというと語弊があるかもしれないが、未知なるものにたいするワクワクと少しの不安がいつも僕を取り巻いているのだ。そういった初めての経験を前にすると五感が敏感になって、繊細に何かを感じ続ける。

送信者 小笠原

そう、そうして得た感覚を再度自分の中で整理してみる日が、旅の中には必要だ。今回の出会いでを通してクジラとの出会い、イルカと寄り添って泳ぐことを経験した今、「クジラが見る夢」という本を読み返したくなっていた。自ら経験をしたあとに読むと、どんな風に感じるのだろうか。そう、今日は本を読むための日になった。

送信者 小笠原
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朝食を7時30分から6時50分に変更してもらい、宿を後にした。港に行き、ははじま丸のチケットを購入。待合所には東京-小笠原のフェリーが偶然一緒になった友達がいた。日帰りで母島に行くらしい。

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デッキで外を眺めて、寝て。すると2時間なんてすぐにすぎていた。船内放送で母島に到着することをしる。ママヤという宿の迎えで、坂道を少し登った宿に到着。おばちゃんが迎え入れてくれた。2階の掃除が終わっていないということで、俺は1階に。見た感じ2階には風通しの良いテラスがあり気持良さそう。午前便で来た人は1泊しかしない人ばかりだった。午後便できた人は残る人もいて、厳密には船がないので残らざるをえない、結果として残ったのは俺と残り4名。

送信者 小笠原
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それにしても暑い。まあ、今日は本を読みたいので、誰もいないテラスで寝転がってクジラが見る夢を再読。2,3年ぶり。イルカと泳ぎ、クジラを見た今は、2年前のそれと沸き上がる感情の立体感が違う。もちろん、共感する部分はだいたい同じなのだけれど。そう、ここに来て思ったことは母島には何もない。父島の夏休みモードとは違った、島の日常が会った。旅行者も極端に少なかった。

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腹が減ったので、昼飯は3軒ぐらいしかない飲食店の1軒である大漁寿司へ。すると友達が食べていた。3軒しかないうちの1軒は休業日で、もう一軒は港から遠いので、この寿司やしかないのだ。せっかくなので島寿司を食べる。港にある案内所で星空スポットの情報や夕日スポット情報を集める。何と言ってもペルセウス座流星群のピークを翌日に控えているし、夕日の時に見えるグリーンフラッシュの絶好のポイントなので下調べは必須だ。星空は旧ヘリポートが良く、夕日は静沢遊歩道(サンセットシアター)が近くていいらしい。

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下見をしようと思ったけれど、暑いのでまた宿に戻る。またテラスで音楽を聴き、日陰で風に当たりながら読書の続き。ああ、気持がいい。見上げれば青い空と山が見える。本を読んでいたつもりが、いつの間にかすやすや寝ていた。そろそろ夕日を見に行くついでに散歩をしようと出かけることに。静沢の森遊歩道を歩き、森の中にある旧日本軍の大砲や弾薬庫を見学。錆び付いているけれど、カタチはそのままに残っていた。こんなところにも戦争の爪痕がひっそりと誰にも知られないで残っているんだと実感。戦争って本当に日本中のありとあらゆるところで、現実としてあったんだとつくづく思った。そして、サンセットシアターをかくにんして、鮫ヶ崎展望台へ。ここのベンチでまた読書。海が目の前で、非常に景色の良い気持いい場所。

送信者 小笠原
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また、本を読み寝る。夕日の時間が近くなったので、おもむろにサンセットシアターへ歩いていく。坂道をえっちらおっちら。西に拓けていて、水平線がキレイに見える。さらに今日は水平線付近に雲が少なくグリーンフラッシュを見る条件としては適している。1人で、夕暮れの空を見ながらボーッとしていた。本当にこんな時間は貴重だなと思う。周りに生い茂る木々も南国風で、改めて南の島にいることを感じた。

送信者 小笠原

だんだん太陽の高度は下がり、空はオレンジ色に染められていった。水平線のちょっと上に横長の雲があったけれど、その雲があるために、太陽が沈んでいく様子が実感できる。ああ、もうすぐ沈んでいく。水平線にキレイに沈む夕日を見るのは久しぶりだなと感じながら、前回は奄美大島だったかなと思い出していた。そして、水平線に徐々に太陽が沈んでいく。半分が沈み、三分の二。おお、今日も一日が終わっていく。水平線にたいようが 沈みかけた瞬間。

「グリーンフラッシュだっ。」
僕は思わず叫んでいた。

「あっ、グリーンフラッシュだっ」
自分でも、自分の発せられた声を耳で聞いて驚いた。

でも、緑閃光はあっという間の出来事だった。本当に「あっ」と声を出している間の出来事だった。僕は見とれていてカメラに残せるはずもなかった。周りに2人いた人が、「ああ、ちょっと緑に光りましたね」と冷静な声で言った。僕は、我に返った。

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本当に太陽が緑に光った。写真では見たことがあったけれど、そんなものより遥かに驚いた。黄緑色の閃光が発せられた。まさにそんな感じ。僕はただ驚いていた。気がつくと写真なんてとってやしなかった。でも、良かった。見た瞬間の緑の光、そして自分が無意識に発した言葉に驚いた時の感覚が今も体に染み付いている。そして、その時はあまりにも生々しく僕の体に染み付いている。幸せとか喜びと言うよりも、唖然として、びっくりしていたと言う方がその時の状況を正確に表している気がする。

送信者 小笠原

自然ってのは本当に驚くべき世界を僕らに魅せてくれる。彼らは僕らが見る見ないに関わらず、ただあるがままにしているだけなのだけれど。僕はそんな自然と言うものが好きだ。頭がちょっと混乱する程の驚きがあった。その名残りを感じつつ、宿へと戻った。同宿の男は4人だった。初めまして、ということで少し話して飯を食った。料理はボリュームもありうまかった。飯を食べると、僕は旧ヘリポートまで歩いていった。途中から街灯が完全になくなり、真っ暗な世界が訪れた。ヘッドライトも消して、ぶらぶら歩き、空を見上げる。すると、さぁーっと星がいくつか流れていった。美幸の浜へ行く曲がり角を入ったところにヘリポートはあった。

送信者 小笠原

明日のための偵察を終え、宿へと戻った。そして、5,6年ぶりぐらいにする明日のスキューバダイビングにドキドキしながら眠りについた。

2 thoughts on “いつかその時に巡りあえることをただ待ちわびて

  1. teratownさん、こんばんは。

    1人旅でグリーンフラッシュか。いいなあ。
    こうやってteraちゃんの日記を読んでいたら、
    ぼく自身はほとんど1人旅をしてこなかったことに気づきました。
    山はたしかに、山岳会時代をのぞいて、
    高校生の時からほとんど1人で登ってきたけど、
    島も含めて日本中をまわってきたのにその多くは仕事だったような。
    (90%以上は1人で行くんだけどね)
    だからteraちゃんのように、旅先で自分と向き合うことは少なかったし、
    気に入っている以外の人と仕事抜きで会ったり話したりするのが得意でもなく、
    でももっと1人旅をしてくればよかったなあ、って思ってます。

  2. momomoさん

    一人旅をほとんどされていないと言うのがとても意外でした。
    かなり色々なところに行っていらっしゃるので、仕事もありつつプライベートでも一人旅をされているものだと思い込んでいました。

    僕は一人旅7割、友達と2割、1割仕事といった感じです。
    気がつけばいつも一人旅になっています。

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