白馬岳に日は昇り、東北新幹線で日は沈む

その日は、日の出を眺めることから始まった。朝5時、場所はペルセウス座流星群を見るために出かけた白馬岳の山頂。昨日の嵐からは信じがたいような晴天の日の始まりだった。


白馬岳頂上から見る朝日

登山口から駅までのバスの本数が少ないので、その時間に合わせて急ぎ足で下山した。下山して携帯を見ると友達からメールが入っていた。「お盆に行われる東北のお祭りに来ないか」と。そのお祭りとは江刺の鹿踊と西馬音内の盆踊りだ。こういったお祭りはその時しか見れないものなので、行こうと思ったが、今から東京に戻り準備をして行っても間に合うのか、東北を走る一部の新幹線は指定席のみだが空席はあるのか、月曜日に東京に戻って来れるのか、などなど課題は山積していた。しかし、行きたいと言う思いの方が強く色々調べ、そして仕事の都合も付けた。白馬から東京までの道のりは、それらの調べごとなどをずっとしていた。

東京の家につき、テントを干し洗濯をする。その後、風呂に入り、電車の空席を探して、初日の宿を探す。旅の準備をして、洗濯を干すと出発。まずは岩手の遠野を目指す。最終電車で遠野に向けて出発だ。新宿経由で大宮へ。大宮から仙台行きの新幹線に乗車する。何も食べていないことに気づき、駅弁を車内で食べていると西の窓から夕日が差し込んできた。もう、そんな時間か。通路側の席だったので、席を立ちデッキの窓から夕日を眺めた。ああ、朝5時に昇った太陽が沈んで行く。一日と言う時間の流れを感じながら、シャッターを切った。


東北新幹線から眺めた夕日

こうして1日で朝日と夕日の両方を見ることは人生でそんなに多いことではないだろう。そんなことをはじめて思ったのはトカラ列島の旅の途中だった。夕日を見ていたとき、「ああ、今朝は日の出も眺めたな」と、ふと思ったのがきっかけだ。そして、今日も白馬岳に日は昇り、東北新幹線で日は沈んでいった。


夜の十の駅前

仙台で降り、新花巻へ向かう新幹線に乗り換える。車内では白馬岳から読み始めた池澤夏樹さんの「エデンを遠く離れて」を読んでいた。新花巻駅で下車しローカル線に乗り換え、遠野を目指す。遠野には22時頃到着した。遠野は柳田國男の「遠野の物語」で有名な地である。そんなイメージもあって小さな駅だと思っていたら、想像より大きな駅で驚いたが、そこはやっぱり田舎の駅であった。駅前は真っ暗で静まり返っていた。町中を少しぶらぶらと歩き、直前に予約した駅前の宿に向かった。いつものようにベッドに入ると3秒で眠りについたと言いたいところだが、テレビをつけたら深夜特急が放送されていた。何でこのタイミングで?と思ったが、以前も夏休みに岐阜で再放送を見たことを思い出した。夏には「旅」という言葉と行為がよく似合う。そして井上陽水の声が旅の孤独と哀愁を誘い胸に染み渡る。過去の海外の旅を思い出しつつ、ついつい見てしまい夜更かし。


夏空の遠野

(2009/08/15)
翌朝8時に起きると、駅にある観光案内所で自転車をレンタルし遠野巡り。カッパ淵、山口の水車小屋を目指す。途中にある神社に立ち寄りながらのんびりと。まぶしい青空が気分を高める。青空の田舎の道を自転車でこいでいると、それだけで腹の底からワクワクしてきた。「夏休み」と聞いたら思い描く夏休みの思い出の1ページ、をのままの世界がそこにあった。カッパ淵へ行く途中にはホップ畑が点在する。これがビールのうまみの原料なんだと思いながら、カッパ探し。必死で河童を探すけれど、発見できず。今回の捜索は切り上げた。


カッパのいないカッパ淵


夏のヒマワリ

それから山口の水車小屋へ行く。この道はゆるやかな上り坂。太ももの筋肉をフルに使いチャリをこいだ。シャツは汗でびっしょりだ。山口の水車小屋は茅葺き屋根で作られた小さな古びた小屋だった。上りがあれば下りがある。帰りはスーイスイと風を切って戻って行った。途中、小さな丘に神社があったので、自転車を止めて参拝。村の至る所に鳥居があった。小さな山の中であり、家の庭、道路の角、田んぼの中。そんなところに立ち寄りながら、遠野郷八幡宮へお参り。戊亥歳の神様ということで、亥年の俺としてはありがたみがあった。


山口の水車小屋


町中にある鳥居

いったん駅に戻り友達と合流。さて、どうするか。ちょっと遠いが電車まで時間もあるので、荒神様(荒神神社)へ行くことに。ここはthe遠野という風景だと言う。地図を頼りにちゃりんこを必死でこいで、山を越え谷を越え。家もまばらな集落に到着。ついに発見。田んぼの中にポツリと茅葺きの小屋があった。すると、友達がおばちゃんに声をかけられる。どっからきたの?東京からです。なんと、このおばちゃんは荒神様の持ち主だとか。権現様とおしら様を見せて頂く。荒神様の御神体はなんと家にあって、偽物が今は神社の中にあるのだとか。年に1度だけ本当の御神体を持って行くとか。御神体である権現様は火の神様だそうだ。獅子の様な顔をして髪の毛もあった。遠野の家には権現様がある家もいくつかあるようだが、顔の形はどこもも違うようだ。そして、おしら様は蚕の神様だとか。ガラスケースに男の神様と女の神様が入っていた。毎年、赤い布をかぶせて重ねていくらしいが、最近はしてないのだとか。そんな話しをおばちゃんがしてくれた。お盆ということもあって、息子さんの家族も帰省しており、お茶を頂きながら話しを伺った。


権現様


荒神神社

お嫁に着て30年以上立つようだが、あまり興味がある訳ではないのでどういう言い伝えなのかなどは詳しく分からないようだった。そんな貴重なものを見せて頂き、荒神様を再度眺め、帰る。しかし、予定の電車にはすでに間に合わない。まあ、いいか。ということで、ジンギスカンハウス遠野食肉センターへ行く。遠野はジンギスカンで有名だと言う。この店は肉屋と併設しており、うまかった。まだ、時間があるので駅からほど近い綺麗な川に入って遊ぶ。水が冷たくて気持がいい。夏休みな感覚を味わい、電車で江刺へ向かう。


川で遊ぶ

東北夏の祭り旅日記の続きはコチラ「江刺鹿踊。西馬音内盆踊り。」

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