足りない絵はがき

僕の中で旅と旅行の違いを決定づけるひとつのモノが絵はがきだ。旅に出たときは旅先から絵はがきを出すが、旅行に行ったときは出さない。それは自分の中での意味付けが影響している気がする。

この定義に従うとすればアラスカからは絵はがき出したから、旅なんだろう。アラスカを旅して実家に絵はがきを書いた。絵はがきを送った場所が北極圏の10人足らずの村だったこともあるのだろうけれど、僕が帰国してから2週間程して届いたようだ。帰国した次の週末に既に実家に帰省していたから、絵はがきは本人よりも時間がかかって届いたことになる。そんなことからも届くまでにしばらくの時間がかかったことが感じとれた。でも、この時間が安心させてくれる。人が移動する時間は飛行機などの恩恵もあって短縮された、しかし、人の心持ちのうつろいは技術の発達に伴って高速化しない。絵はがきが届くまでの時間も旅の続きのような気がして、その間をかけて徐々に東京の生活に馴染める気がする。

そう、絵はがきで思い出すことと言えば、スペイン・モロッコを旅した時の絵葉書だけがない。他の国を旅をした時はいつも絵はがきを送っているのだけれど、スペイン・モロッコの旅だけ絵はがきを送っていないのだ。実家のテーブルクロスの下には僕が送った絵はがきが並べられているのだけれど、1枚だけ足りない。パズルの1ピースだけを無くしてしまったような感じがする。今思えばスペイン・モロッコの旅でも送れば良かったなとも思うが、その時は初めての海外一人旅でそこまで気が回らなかったのだろう。次、スペインとモロッコに行くことがあれば、絵はがきを送ろう。

無くした1ピースを探しにいつかスペイン・モロッコをまた旅するんだろうと、おぼろげながら思っている。

海の向こうからやってくる絵葉書

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