日別アーカイブ: 2010/1/8 金曜日

僕を北極圏へ導いた一冊の本

アラスカに行くと決めてどんな本を持っていこうか考えた。一人で旅をしていると、本が良き友となってくれるから荷物をいくら切り詰めても、本は旅に絶対に欠かせない。アラスカを旅しているときに、どんな出来事に出会い、どんな気持ちになり、どんな本を求めているかを想像しながら、本を選んでいった。

今回はアラスカに行くので星野道夫の本は欠かせなかった。アラスカに行く最も大きなきっかけになった人物なのだから。星野道夫の本の中から何を持っていこうかなと考えた時に「長い旅の途上」が頭に浮かんだ。この本のタイトルが今回の旅を言い表しているようだったからだ。

そして、もう1冊は未だ読んだことがない本にしようと思った。アラスカに関する本は今までに30冊ぐらい読んでいるが、フランク安田について描かれた「アラスカ物語」は読んだことがなかった。星野道夫、植村直己もアラスカに深くかかわったが、それよりも前にアラスカで活躍し生き抜いたのがフランク安田だった。名前だけは知っていて数年前に「アラスカ物語」を買い求め本棚にはあったのだが、450ページほどの長編であり気が進まなく読んでいなかった。今回はいいタイミングだと思い2冊目は「アラスカ物語」をカバンに入れた。

結果的にこの「アラスカ物語」はとてものめりこんで読めた。オーロラやアラスカの気候に関する情景描写の細やかさ。エスキモーやインディアンに対する深い理解のもとに書かれた記述。そして主人公のフランク安田に対する著者新田次郎の思い入れを強く感じられる作品だった。この本を通してエスキモーとインディアンの文化の違いや、彼らがどのように狩猟をして生活していたのかが映像を見ているかのように具体的に想像して理解できた。もちろんアラスカ物語の舞台である地に滞在しながら読んでいたので、日本で読むよりも想像力は豊かになり100年前の日常がすぐそこにあるような印象を持った。
また、アラスカのゴールドラッシュやそれに伴うアラスカの生活習慣の変化などアラスカの近代史も詳細に書かれており、非常に興味深く読めかつ学ぶことが出来た。

このフランク安田は海岸エスキモーを率いてビーバー村を作ったことで有名だが、それだけではなかった。ワイズマンという北極圏の村にも長い間住んでいた。旅の途中にこの本を読みワイズマンに行きたくなり、急遽ワイスマンに行くことにした。当初はデナリ国立公園の入り口にあるヒーリーという町に行こうと思い、車と宿泊の手配をヒーリーにある宿としていた。しかし、この時期にデナリ国立公園に入ることは難しく、行くかどうか迷っていた。そんな時に、この本を読み行き先を決める後押しをしてくれた。

もちろん行くことを決めた理由はワイズマン村に行くためだけではなかった。ワイズマン村の近くはブルックス山脈もある。ここは秋にカリブーの大移動が駆け抜ける場所でもあるし、星野道夫がとても美しいと書いていた場所の近くだ。そして、ワイズマンは北極圏内にある村で、「北極圏に足を踏み入れる」という行為に惹かれたのも事実だ。さらに、コールドフットとワイズマンはフェアバンクスよりもオーロラ観測に適した場所で、アラスカで最もオーロラが見られる場所なのだ。こんな理由から北極圏ワイズマンに行くことにした。

送信者 ALASKA 2009

冒頭の付け足しになるが、実はアラスカの旅には2冊だけ持っていく予定だったのだ。しかし家をでる直前に2冊では少ないなと思い立ち、偶然手にとった本が「おくりびと」だった。この本もまだ読んだことがなかったので、カバンのサイドポケットにねじ込んだ。偶然に手にとった「おくりびと」だったが、とても心にずしりとくる素晴らしい内容だった。

送信者 ALASKA 2009