一つの答え

いま生きているという冒険 http://teratown.com/blog/2006/05/07/thaaeeeea/ という石川直樹さんの本。その関連の話を聞いて書いたブログがこれだった。

このとき、彼はひたすら「人間と動物が何も介さずに入れ替われるという」「一つのものから全体が見える」といっていた。

今日、星野さんの文章を読んだら、同じだった。 

「木も、岩も、風さえも、魂をもって、じっと人間を見据えている。ぼくは、まるでひとつの生命体のような森の中で、いつか聞いた、インディアンの神話の一節を、ふと思い出していた。」(星野道夫ノーザンライツ)

 「われわれは、みな、大地の一部。おまえがいのちのために祈ったとき、おまえはナヌーク(シロクマ)になり、ナヌークは人間になる。いつの日か、わたしたちは、氷の世界で出会うだろう。そのとき、おまえがいのちを落としても、わたしがいのちを落としても、どちらでもよいのだ。」(星野道夫ナヌークの贈りもの) 

これは、ある一つの答えなのかもしれない。
この答えが完全に正解だとか、そういった次元のことを言っているのではない。

ついでに、星野さんの言葉ピックアップ多くの選択があったはずなのに、どうして自分は今ここにいるのか。なぜAではなく、Bの道を歩いているのか、わかりやすく説明しようとするほど、人はしばし考え込んでしまうのかもしれない。誰の人生にもさまざまな岐路があるように、そのひとつひとつを遡ってゆくしか答えようがないからだろう。
(『星野道夫著作集3』、一四〇頁、「旅をする木」より)
町から離れた場末の港には人影もまばらで、夕暮れが迫っていた。知り合いも、今夜泊まる場所もなく、何ひとつ予定をたてなかったぼくは、これから北へ行こうと南へ行こうと、サイコロを振るように今決めればよかった。今夜どこにも帰る必要がない、そして誰もぼくの居場所を知らない……それは子ども心にどれほど新鮮な体験だったろう。不安などかけらもなく、ぼくは叫びだしたいような自由に胸がつまりそうだった。
(『星野道夫著作集3』、一四二頁、「旅をする木」より)


さあ、もうひとりぼっちだと思うと、自分で自分を元気づけたくなる。とともに、それとは裏腹の、叫びだしたいような解放感があった。
(『星野道夫著作集1』、五一頁、「アラスカ 光と風」より)
ぼくは、“人間が究極的に知りたいこと”を考えた。一万光年の星のきらめきが問いかけてくる宇宙の深さ、人間が遠い昔から祈り続けてきた彼岸という世界、どんな未来へ向かい、何の目的を背負わされているのかという人間存在の意味……そのひとつひとつがどこかでつながっているような気がした。
 けれども、人間がもし本当に知りたいことを知ってしまったら、私たちは生きてゆく力を得るのだろうか、それとも失ってゆくのだろうか。そのことを知ろうとする想いが人間を支えながら、それを知り得ないことで私たちは生かされているのではないだろうか。
(『星野道夫著作集4』、八四頁、「森と氷河と鯨」より)
ボブは、現実の世界では見えにくい、不可解な世界の扉を少しずつぼくに開いていた。それは“ビジョン”と呼ばれる体験、すなわち霊的世界の存在だった。(中略)偶然の一致に意味を見出すか、それとも一笑に付すか、それは人間存在の持つ大切な何かに関わっていた。その大切な何かが、たましいというものだった。
(『星野道夫著作集4』、五〇頁、「森と氷河と鯨」より)
「その土地に深く関わった霊的なものを、彼らは無意味な場所に持ち去ってまでしてなぜ保存しようとするのか。私たちは、いつの日かトーテムポールが朽ち果て、そこに森が押し寄せてきて、すべてのものが自然の中に消えてしまっていいと思っているのだ。そしてそこはいつまでも聖なる場所になるのだ。なぜそのことがわからないのか」
 その話を聞きながら、目に見えるものに価値を置く社会と、目に見えないものに価値を置くことができる社会の違いをぼくは思った。そしてたまらなく後者の思想に魅かれるのだった。夜の闇の中で、姿の見えぬ生命の気配が、より根源的であるように。
(『星野道夫著作集4』、二六頁、「森と氷河と鯨」より)

が、私たちが日々関わる身近な自然の大切さとともに、なかなか見ることの出来ない、きっと一生行くことの出来ない遠い自然の大切さを思うのだ。そこにまだ残っているということだけで心を豊かにさせる、私たちの想像力と関係がある意識の中の内なる自然である。
(『星野道夫著作集5』、一二九頁、「ノーザンライツ」より)

物語の風に吹かれながら、ある想いが心の中にふくらんでいた。ワタリガラスの伝説を捜しに、シベリアへ渡ろうと思った。
(『星野道夫著作集4』、一一八頁、「森と氷河と鯨」より)

(『星野道夫著作集4』、一一八頁、「森と氷河と鯨」より) 

 

 

 

 

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