アラスカ物語5 少しずつアラスカを感じ始めた日々

前回までのアラスカ旅日記はこちら「アラスカ物語4 日が昇らないアラスカX’masの朝」

アラスカで数日過ごしていると、徐々に感覚を掴んでアラスカのリズムに馴染んでくる。それは、普段は気にもかけない些細なことの違いをつかみ取ることに近い。太陽が出ている時間であり、オーロラが出る方角や時間、重ね着する服の枚数だ。目を覚ましても外が暗いことには慣れ、暗くても朝なんだと自分の意識や体を理解させることが出来るようになった、

バナナとパンとヨーグルトという朝食を終え、外に出ると美しい朝焼けが空を覆っていた。この地フェアバンクスは北極圏に近く、冬は太陽が南に近い場所から昇ってくる。だから朝焼けは南東の空を染める。今日もいい天気だから、オーロラが見れるだろうと分かるようになってきた。

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昼間は昨日と同じように散歩をしようと決めた。昨日歩いた白の世界があまりにも美しく、そして人間が自然の一部であるということを感じさせてくれる場所だった。今日は昨日とは違う道を歩こう。一人でてくてくと歩き、雪の中の宝物をイメージしながら、春を想う。今は雪で覆われて見れない大地には、どんな植物や花が隠れているのだろう。そして、どんな動物が駆け巡るのだろう。雪が溶けた春を思い描きながら、雪の世界を楽しんだ。

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ロッジに戻り、星野道夫さんの「長い旅の途上」と新田次郎さんの「アラスカ物語」を読む。アラスカにいる自分を、もっともっと深淵なアラスカの世界へと連れて行ってくれる、そんな本だった。あまりにも引き込まれて、読みふけってしまっていた。気づいた時には夜で、夕食を取り、日記を書き、仮眠。このリズムも定番化した。あとは、10時過ぎに起きて、空を見上げるだけだ。

軽い眠りから覚め、外へ出るとうっすらと緑のオーロラが出ていた。やはり日中の天気がよければオーロラはかなり高い確率で見られることを確信した。揺らめくオーロラを眺めながら、悠久の自然を想った。オーロラを眺めながら、自然と人間の関わりについてぼんやりと考えていたら、ジョージがやってきた。彼はフェアバンクスのビールとウォッカを勧めてくれた。お酒は冷えた体を温めてくれる。ホッカイロなども良いが、体内から発熱するのがもっとも体を温める良い(酔い)方法だ。

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それから、中国出身で今はミズリー州立大学でMBAをとっている女性ジョイと三人でいろいろなことを話した。中国のこと、アメリカのこと、日本のこと、自然のこと、環境問題のこと、仕事のこと、政治のこと。印象的だったのは、ジョイが中国の将来に大いなる不安を抱いていることだった。これから経済発展していくだろう中国の影の部分を非常に深刻に語っていた。一人っ子政策による少子高齢化は日本を追いかけるように大きな問題としてすぐやってくるだろうと。そして、彼女の考え方の変化も興味深かった。中国で働いているときは優秀だ大学を卒業し、キャリアウーマンとして我武者らに働いていたという。両親のことを顧みることも無く、7年間働きつづけた。でも、MBAを取りにきて、さらにアラスカをしばらく旅して心境の変化があったと言う。仕事が全てじゃないと。もっと大切なものがあるのに、気づかなかった。それを気づかせてくれた今回の旅はとても貴重なものになったと、爽やかな笑顔で語っていた。高度経済成長の日本に似た現在の中国で、こんな考え方を持つ優秀な女性もいるんだと知り、世界の未来を少しだけ安心して迎えられる気がした。

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オーロラを眺めながら、語り、そして朝を迎えた。

アラスカ旅日記の続きはこちら「アラスカ物語6 犬ぞりで出かけよう」

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アラスカと同様に惚れた土地、ウユニ塩湖に行った時に書いた文章。このときの雲が、オーロラのようだったので、参考リンク。
ボリビア ウユニ塩湖にて。
このときの文章の方が、瑞々しくて思いが素直に伝わって良いな。

ついでに、こっちも。
参考リンク:角田光代さんの旅先三日目。

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