日別アーカイブ: 2010/2/27 土曜日

「そんな土曜の朝があってもいいじゃないか」と笑顔で言ったのは、とあるフランスの詩人だった。

「そんな土曜の朝があってもいいじゃないか」と笑顔で言ったのは、とあるフランスの詩人だった。土曜の晴れた朝、シャンゼリゼ通りを南へ歩きながら、口にした言葉だった。

彼はスポーツジムへ向かっていた。そのスポーツジムにはトレーニングの設備とプールがあったけれど、その詩人はプールを目指してジムに通っているようだった。犬の散歩するような気持で、並木通りをプールへ向かっていた。彼の伝記を読んだ記憶によると、普段生活する環境とは異なる水の中は、思索の世界だったという。水着に着替え、シャワーを浴びプールの中に入る。泳ぎ初めて全身が水につかった時、創造の世界への扉をノックした。そんな水中の世界から、多くの詩が生まれた。

「包まれる 水の世界で 夢見れば はるかかなたに 風の音」

日本語に訳されると、全く趣が異なる気がするけれど、フランス語のニュアンスであれば違った世界を想像させてくれるのだろう。

そんな詩人が水の中で発想を得るために、欠く事が出来なかったものがあったと言う。それは、焼きたてのストロベリーパイだった。記憶を辿るとジムの近くに小さなカフェがあった。そのカフェは小さい店構えながらもお店でパンを焼いていたと言う。朝早くから生地をこね、じっくりと焼き上げられたあつあつのパン。

彼は挽きたてのコーヒーとパイを頬張りながら、泳ぐための力をつけた。日々の生活の中でこんなにも幸せなときが訪れる事の喜び噛み締めながら、彼は語った。「そんな土曜の朝があってもいいじゃないか」と。

という話しのほとんどはフィクションであり、阿佐ヶ谷に住むスイマーに着想を得て書いたノンフィクションです。

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