日別アーカイブ: 2006/10/15 日曜日

子供のころに見た夢を

子供のころ誰もが見るであろう夢、いや思いを馳せるであろうことがある。
それは、あの雲をつかんでみたい、ソフトクリームのような雲を食べてみたい。
雲の上で寝たい。
どんな場所で生きる子供にとっても、目では見えても遠くて届かない世界。
それが空であり、雲である。

高い建物に登り、雲がもっと高いことを知る。
高い山に登り、空がさらに高いことを知る。
そして、飛行機に乗り、雲を見る。
でも飛行機と言う、空とは閉ざされた、鉄の箱の中にいることに気づく。
さらに、宇宙へと夢は続く

雲の上には乗れないと、知識として知ってしまった今、
そんな夢を現実のように見させてくれるのがスカイダイビングなのかもしれない。

僕はスカイダイビングをするために埼玉県、桶川にある本田エアポートへ向かった。
その名の通り、あの「HONDA」の飛行場である。
他の自動車メーカーにはない夢が、ホンダにはあるきがするのは、こういったものがあるゆえんだろう。

power of dream

駅に着くと、友達が遅刻。
桶川の町をぷらぷらした。昼で腹も減ったので、飯でも食おうと思ったが、一瞬躊躇した。
セスナやダイビング中に飛行機酔いやダイビング酔いで、吐くのではないかと。
しかし、今までの経験上悪路バティックなセスナでも酔わなかったからと思い、
古びた商店街のような通りにある、定食屋のような中華料理屋で焼肉定食を食べた。
焼肉定食なのに古い中華料理屋で出てくる水が入っているようなイメージのコップにアイスコーヒーが出てきた。それをすすりながら、店主のおやじとテレビを見た。

それから、飛行場へ向かった。
短い滑走路が一本あるだけの河川敷の小さな飛行場だが、
そこには個人所有と思われるセスナが何機もあった。

そして、ふと空を見上げるとパラシュートで降下してくる人が何人もいた。
近づいてくると、ワクワクしてくる。
空を見上げると、あんなところに行って、生身の体で降りてくるのかと思うと不思議でならなくなった。
それに、簡単な装備。簡単な準備。
ただ、パラシュートだけなのだから。

上下のつなぎを着て、ハーネスのようなタンデムのインストラクターと離れないようにする器具をつけた。
そして、滑走路の脇で自分の順番を待つ。
僕たちが乗る、セスナが南の空から飛んできて着陸した。
そして、すぐ近くに。
セスナに乗り込むとき、プロペラの風圧で少しよろけた。

すぐに、セスナは離陸した。
僕は、飛び降りるところのまん前だった。
飛び降りる場所だから、もちろん扉などない。
上空に行くとどんどん気温が下がっていった。
風が全身に吹き付けた。
町はどんどん小さくなっていった。
以前ナスカで乗ったときのような、揺れはなかった。
もちろんなんだが、地上を見せるために右左に傾ける必要はないのだから。
そんなことを思っているうちに、1000メートルを越え、2000メートルを越えた。
扉が開いていて、風が吹き付けるのを体で感じると、自分が空にいることを実感できてたまらなくワクワクする。

インストラクターが声をかけてきた。何だと思ったら、ブロッケン現象だった。
偶然にもブロッケン現象を見ることができた。

厚い層の雲を突き抜けると青い空、そして太陽の少し南に山が顔を出していた。
美しい。あの白くモクモクとした雲の絨毯の上にシンメトリーの富士山が聳え立っていた。
太陽の眩しさもまた、たまらない。
すんげー、ぐぉー。っと一人興奮した。
広すぎる大きすぎる、自然にどうしようもない興奮を感じたのは久しぶりで、
ワクワクしてどうしようもないくらい美しかった。たまらなかった。

そうしているうちに、もう4000メートル。
飛び降りる高さだ。
1人、2人と飛んでいき、俺の番が来た。

インストラクターの掛け声と共に、飛び降りた。
どんどん落ちていく。落ちていってもスピードは落ちない。当たり前だが早くなる。
このまま、落ち続けるのではないかと思った。
このまま地面にまで行くのかと思った。
このときは何も見えていない。意識だけあって、脳で考えているけど、スピードが早すぎて何も感じていない。
ストッーンってな感じ。

そんな時、安定降下に変わった、姿勢を地面と水平にする。
このときは、まだパラシュートは開いていないが、景色を見ることができた。
遠くに太陽に染められた富士山が。
もうたまらない、どんどん落ちているのだけど、富士山を見つめた。
そして、手を右に左に動かすと、旋回した。

めがねをつけたまま飛んだ。
目に風が入るし、涙が出るし、鼻水は出た。
めがねが飛ばないかと不安にもなった。

暑い雲の層に突入した。
何も見えない。どんどん雲に吸い込まれる。
そして、雲から脱出。

また、インストラクターの声と共に、パラシュートがオープン。
50秒で4000メートルから1200メートルまで落ちたのだ。
パラシュートが開くのと同時に、どっんっと衝撃を感じた。

すると、下降が止まった。現実の世界に取り戻された気がした。
景色がゆっくりと見えた。

そして、ゆったりとパラシュートで飛行。
いつも見る町とは違った視点で、違う町が見えた。町のつくりが見れた。

空をたった一枚の布だけで飛んでいるのがたまらなく心地よかった。
なんか、空の一部に僕がなったような。

耳がボーっとしたので、耳抜きをした。
そして、アクロバット飛行。
僕が、両手で操作する紐を握った。
右手を引くと、右に。左手を引くと左に。

腰の辺りまで手を引くと、グルグルと回った。
アクロバティックな空のたびだった。

そして町をみながら着陸。

大地に両足が着いた時、僕は陸の動物だと思った。

たった、5分ぐらいなのに予想以上の疲労。
生身の体で、4000メートルに放り出され、時速150キロから200キロを受け止めたのだから、
疲れるのも無理はないだろう。
 
なんといってもセスナからの景色、空を体で空を味わう感覚この二つが良かった。