日別アーカイブ: 2015/10/18 日曜日

100マイルの最後の数十マイルを練習することはできない

100マイルの最後の数十マイルを練習することはできない byジェフ・ブラウニング

これって、トレランの100マイルにかぎらず、人生のいろいろなことに言えるのだけど。

100メートル走も、大きな大会の場はその時しかないし、そのプレッシャーとかは他では体験できないかもしれない。ただ、100マイルは、練習で100マイル走ることは実質的にできない。時間的にも精神的にも肉体的にも。だから、はじめての100マイルレースは、過去に経験のない大きなチャレンジを本番でするということ。

もちろんエベレストに登ることも、練習で登ることができないから、ぶっつけ本番だし、そのぶっつけ本番が今までで一番難易度が高いことをすることになるのだ。

こういった、練習できないことにチャレンジすることは面白い。

分からないからこそ、練習できないからこそ、想像する、練習できないからこそ、うまくいかないこともある。
だからこそ、その場でなんとかしてクリアすることを頭と体と精神を使って考える。

とっさの判断力、肉体と精神との対話とコントロール、自然環境の変化の読み取りと予測などなど、フルに頭と体を使うしかない。今まで経験もないから、ベストな解も分からないまま、出来る限りイメージし、今までの類似経験や知識を集約してベストと考える選択肢をchoiceしていく。

まあ、気合入れれば、100キロまでは個人で練習できるんだよな。
でも100マイル、それも山となるとなかなか練習できない。個人的に1人でも100キロまでは山を走ったことがあるが、100マイルという距離をそして山となると一度もない。不可能ではないが、実質的にはできない。だからこそ、頭でイメージを必死でするし、準備をする。でも、実際とは異なる。だから、レース本番では、その場で瞬時の対応を重ねないといけない。まあ、そこが楽しいのだ。

そして、だからこそ価値がある。普段できないからこそ。100マイルの最後の数十マイルは、70マイルを走ったからこそ感じるものが、残り30マイルにはある。最後の30マイルにしか訪れない体の変化精神の状態というものがある。30マイルを走ったからといって、100マイルの後半30マイルとは全く意味が異なる。そこなのだ。

当たり前だけど、あらためてこのように書かれて気づくことが人間には多い。100マイルは旅のようだし、人生をぎゅっと凝縮したようなもんだと思っている。練習できないから、ひたすら想像する。イメージを徹底的にして、シミュレーションを繰り返し、対策を考える。できないからこそ、考えるのだ。でも、実際は全くイメージしなかったことが起こる。

--100マイルレースの魅力って何?

「例えば、100m走だったら、練習で100mを何回も走ることができるよね。ところが、100マイルはそうはいかない。たとえば、100マイルレースの最後の数十マイルをシュミレートすることはできないんだ。それが、50kmとか100kmと別物である理由だね。最後の40マイルは全てが揃わないと走りきれない。はまる理由はそこなんだ。最後はどうなるか判らないからね。
それと、100マイルは多くのランナーにとってはレースではなく、旅に近いものだと思う。誰かと競いあうというよりは、自分との戦いさ。『100マイルは人間が持っている感情をすべて味わえるすべてのレースだ』なんだよ。人生で味わうすべての感情を凝縮しているんだ。すごいよね!」

ジェフ・ブラウニング

UTMF2015 3位 ジェフ・ブラウニング(USA)インタビュー

送信者 UTMF2014