ハセツネは長い。
真っ暗な夜も走る。
おんたけウルトラはもっと長い。
オーバーナイトで朝を迎えても走る。
UTMFやUTMBはもっともっと長い。
2日もの夜を明かしてなお、走る。
TJARトランスジャパンアルプスレースは、長いと言う概念を越えている。
何度も朝を迎え、夜を乗り越え、また朝、夜、走り、走り、走り抜く。
距離にして415キロ。
日本海から北アルプス、中央アルプス、南アルプスを越えて太平洋へ至る。
トップで5日、制限時間、いや制限日数は7日間。
あまりにもスケールが大きくて、すぐにはイメージがわかない世界。
人間の想像力には限界がある。
1週間先のことを緻密に予測することは困難だ。
いわんや、変化の多い自然の中で、肉体も精神も極限に追い込まれた状態で。
2年に1度開催されるこの大会は、選ばれし人が出場する。
今年も実技試験、筆記試験をクリアした選手。
その数は30人にも満たない。
僕はUTMBに行く前に行われたこの大会をネットで追いかけていた。
選手が持っているGPSを元に、ネットで現在地がリアルタイムで表示される。
これをひたすら見ながら、ドキドキした。
僕も応援に行こうと思ったけれど、日程がどうしてもあわずに諦めた。
応援に行った友達の写真やコメントに胸を高鳴らせた。
そんなTJARの様子がNHKで放送された。
テレビはないが、スマホのワンセグで食い入るように見た。
偉大なる挑戦者達は、ただひたすら太平洋を目指した。
雨が降り、風が吹く。
足を痛め、眠気が襲う。
そして、制限時間が迫ってくる。
様々な状況をひとつひとつ打破しながら、ゴールへと。
どの選手にも大いなる挑戦であり、憧れであることは変わりないと思うが、レースに対する思いやきっかけは様々だろう。
「人間の潜在能力を確かめたい。」
「やれば出来ちゃうなってところがあるから、チャレンジしたい。」
「自分との戦い。挑戦ですよね」
「好きなことにチャレンジできることがあるのは希望」
「レースに出ることで、自分の知らない能力が出てくる気がする
どこまで走ることが出来るのか。」
「ゴールして始めて見えてくる部分があると思う
それは走ることだけではなくて、考え方とか生き方と言う部分で。」
「やるなら速いうちだなと言う決断をした
大きなチャレンジをして、達成すると言う、大きな満足がえられましたね。」
「自分に取って困難なことに挑戦して、それを乗り越えれば、何か得られる物があるのではないか。」
チャレンジすること。
自分の成し遂げたいことに近づくために日々努力を積み重ね、勝負に挑むこと。
その姿が、美しく、清らかで、かっこよかった。
前回に続き今回も優勝した望月さん。
その笑顔が印象的だった。
関門である市ノ瀬で、
「やべ、ワクワクしてきた」
「自然に帰ってくるわけだから」
「俺の場合、家に帰る感じ。」
自分が生まれ育った故郷南アルプスに辿り着いた時の笑顔。
本当に澄み切った笑顔。
全ての山を終えた。最後のロード85キロで彼はこう語った。
「何だったんですかねこの5日間」
「何だったんだろう。ワクワクだけじゃ済まなかったですね。」
「でも、勉強させてもらえることがあった。それがあるからいいのかな。」
5日間と言う長い間、究極の状態で果てしない自問自答、禅問答を繰り返しているようだった。
長い長い心の旅の途上。
そして、ゴールシーンはそれぞれの選手が、それぞれの時を味わっていた。
自分のワガママ、やりたいことをひたすらやって、やって、やって。
日々の生活では、周りに迷惑をかけることも多いだろう。
でも、それを暖かく迎えてくれる、家族。
挑戦が実を結んだ瞬間。
| From 北岳間ノ岳2012 |