【地球の裏のその先へ11】広大無辺なパタゴニアの大地との出会い、頂の見えない大晦日の夜

【地球の裏のその先へ10】荷物との再会、メンドーサとの別れ

雷が轟いていた夜も朝には静かな世界に変わっていた。物音で目を覚ますと、搭乗口の脇の床だった。なんでだろう、ここにいるのは。観光客の足下を見ながら、きょろきょろして気づいた。昨夜は空港で寝たのだと。ふと、自分はいったい、いつまでこんなことをしているのだろうと思ったが、まあ、若いから床で寝るとかどうとかって理由じゃなく、自分のスタイルなんだと妙に納得して起きた。ぞろぞろやってきた足下から見上げると、日本人のツアー客だった。

荷物を片付け、カラファテ行きの飛行機に乗り込んだ。年末のパタゴニア行きの飛行機ということで、満席。空からパタゴニアの大地を覗き込みながら、何にもない世界にランディング。パタゴニアって茫漠としている。そんなイメージがあったが、どこまでも続く原っぱが続いていた。ここがパタゴニア。空は曇っていたし、風も吹いていた。

送信者 Aconcagua&Patagonia

空港につくと、フィッツロイなどがあるエルチャルテン行きのバスを空港の出口あたりで見つけて予約。大半がツアー客だったので、バスに乗るのは数人程度。人数が集まると、バンに乗り込んだ。どこまでも続く原っぱを縫うようにしてエメラルドグリーンの川が流れる。どこまでいっても、学生は元気で、さらに集団化すると手が終えない。どこの国の学生か知らないけれど、同じバンに乗り合わせた彼らも元気だった。僕の横に座っていた夫婦はあきれていたが、これが若者がもつエネルギーの証なんだろう。

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僕はひとり、流れていくパタゴニアの大地を窓ガラス越しにぼーっと眺めていた。アコンカグアの敗退からまだ時間が経っていなく、いろいろなことが頭の中をよぎっては消え、よぎっては消えていった。途中、何にもないところに1軒だけあった建物で休憩。ホテル兼カフェ兼お土産屋といった感じだろうか。パタゴニアと言えばチャリダー。南米最南端ウシュアイアを目指してるであろう自転車乗りたちに何人も会った。彼らを見ると思い出す仲間がたくさんいる。僕が学生時代に南米を旅しているときに会ったチャリダーのみんな。そして、ゆうすけさんや本郷さんやタクジさんなど、チャリで世界を旅した身近な友達も、こうして雨の日も風の日も、ただもくもくと自転車をこいでいたのだろうかと。そんな日々は彼らにとってどんな時間だったのだろうかと。

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リャマなのかピクーニャなのか、なんなのか分からないけれど、動物にもすれ違った。エルチャルテンが近づくにつれ、雲が消えていった。そして、勇ましい山々が顔を出し始めた。エルチャルテンは近い。山のエリアにきたんだ。ここがあのフィッツロイが聳える町か。

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エルチャルテンは小さな町だった。本当に小さな小さな、フィッツロイの観光拠点のためだけに作ったんだろうと思えるほど小さく、作られた区画の町だった。バスを降りてすぐ目の前の宿に入って空室を聞くと、ドミトリーがあったので宿泊することにした。町を一通りぶらぶらして、といってもすぐにすべてを歩いてしまえるほどの小さな町で、絵はがきなどを買った。

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観光案内所に行き、地図をもらってちょっとだけ山に入ることにした。その前に、テントをレンタルしようと思ったが、どこの店もやってなくてあきらめた。テントさえあれば、2泊3日で縦走して、ひっそりと自然の中で年越しをしようとしたのに。いつまで天気がもつか分からないし、滞在期間も長くないので、とりあえずいけるところに行ってしまおうと。地図を片手に山の中へ。

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渓谷の美しさ雄大さ、枯れた木も勇ましく、黄色く小さな花が咲き乱れ、日本の山かと思うほどしっとりとした水源があり、遠くには氷河が崩れている。ああ、パタゴニアという自然の大地は大きく、いろいろな側面を内包している。そんな自然の偉大さを味わいながら、トレイルを進む。登山者は下山してくるが、俺だけ山の中へ。荷物も少なくトレランスタイルなので、想像よりも速く進めたので、セロトーレまで足を伸ばすと決めた。

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セロトーレの峰は雲に隠れて見えなかった。ただ、氷河が浮かぶ湖の後ろに立ち尽くすセロトーレは隠れていた方が、その見えない部分を想像できて、今の僕にはよかった。頂上まで、すべてが分かってしまうよりは、頂上という場所は未知のものであり続けてほしかった。暗くなる前に戻ろうと、帰りは小走りで山を下りた。地元のおっちゃんがトレランをしていた。トレラントいう遊びは特別なものでもなんでもなく、ただ山があって走るのが好きだから、ちょっと走りにきた。そんな雰囲気。ああ、これが自然と遊ぶということなんだと感じた。自然と遊ぶことは、改めてすることでも何でもなくて、日常のヒトコマに過ぎないのだ。

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近くの売店でメンドーサワインを買い、食堂であまっていたカップラーメンをすすりながら、夕食とした。偶然、世界一周中のカップルがいたので、旅の話をワインを飲みながら交わして、夜が更けていった。ふと、年越しの外を見てみたくなって、玄関から出た。ここはNYでもロンドンでもシドニーでもない。なんのお祭り騒ぎもなく、いつも通りの夜が流れていっているようだった。

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大晦日の夜、こんなことをFacebookにつぶやいて眠りについた。

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無事に退院して、そのまま風に吹かれてパタゴニア。

そんな年の瀬、年のはじまり。

天気の悪いこの地域だけあって、憧れのセロ・トーレも雲で見え隠れ。

今は宿で会った、世界一周新婚旅行夫婦とメンドーサワインを飲みながら、そろそろ新しい年を迎えます。

今年もいろいろな楽しいこと、苦いことを味わわせてもらいました。特に夏のPTL、今回のアコンカグア、仕事の仲間とは本当にいい時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。

最後の果実を得ることはもちろんですが、その過ごした時間が僕にとっては1番しあわせでした。本当にありがとうございました。

新年はフィッツロイを見ながらキャンプでもしてきます。朝焼けのフィッツロイ、見てみたい。

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大晦日の夜は更けていった。2013年をこうして終え、2014年をこうして迎えた。

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