日別アーカイブ: 2012/12/3 月曜日

【Amazing Summer 2012】突然のUTMB

【Amazing Summer 2012】ついに前日

今年UTMBに出れるなんて思ってもいなかった。そもそもエントリーしたのもノリだった。そして、当選するとも思っていなかった。もう少し先からと思っていたUTMBが突然に現実の物として目の前にやってきた。そんなUTMBは、直前になっても「突然のUTMB」だった。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

レース当日、目を覚まし、同室の羊さんのノートPCでUTMBの中継を見ながら、準備をする。そして、CCC組みを送り出す。心折れ部のCCC4人組は元気に出発していった。TDSは既にスタートしており、その状況が伝わってくる。かなり寒く、状況は厳しいようだ。CCCもコースが変更になったとの情報が入ってくる。本当に最新の情報をいち早くキャッチして、対応していく情報戦のようになり、トレランとは違った意味で楽しくなってきた。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

朝食を食べながらUTMB組みのエディさんやミックスさんとも、レースの服装や装備について相談を繰り返す。シャモニーの町は小雨が降るものの最悪の天気と言うほどではなかった。TDSのゴールを見に行き、選手の服装や装備をチェックしにいく。ほとんどの選手はレインウエア上下を着ており、ズボンは泥だらけだった。その様子からもレースの状況が伺えた。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

夕方のスタートになるので、昼間はできるだけ寝ておこうと思ったが、なかなか寝られない。というのも、状況が刻一刻と変わっていくので、その情報を得て対応するためだ。と、そんなときコースが変更になるという情報が流れた。100マイルが100キロに変更と。公式のアナウンスではなかったが、トレランの有名なアカウントでリリースのPDFが掲載された。かなり信頼度の高い情報だと思った。と、同時に衝撃が走った。モンブランをぐるっと100マイル走れるものだと信じて疑わなかった自分が、突然地獄に堕ちたような。這い上がれない絶望と悲しさに包まれた。突然UTMB が目の前から去っていった。

ネット上でもその噂は一気に広まり、衝撃が走った。100キロになると分かったものの、コースがどのようになるのか、制限時間は何時間か、荷物のデポはあるのか?などなど不明なことばかりだった。とりあえず、デポはなくなると予想して、デポの荷物から必要な靴下や防寒着などをザックに詰めた。さらに、食料も多めに持った方が安全だと思い、追加で食料を持つことにした。あとは、新しいコースが発表されるのをまだかまだかとスマホを触りながら待ちわびた。

荷物の準備をしたり、昼飯を食べにいったり、友達のTDSのゴールを見に行くなどして時間を過ごした。寝た方がよかったが、100キロのレースになったので寝だめがそれほど重要でもなくなったので、その点は気が楽だった。正直な所、UTMBが本来のUTMBでなくなり相当落ち込んだ。もう、やってられるかと思った。トップ選手ものきなみレースへの出場辞退を表明しはじめていた。やりきれない気持で一杯だった。今回の旅ではモンブラン登山とUTMBが2つのビッグイベントだったが、モンブラン登山も悪天候でモンブランタキュールで撤退だったし、UTMBも完全な形で走ることができないと確定した。この気持はどこにぶつけていいか分からなかった。しかし、この悪天候で2000人が走った場合のリスクが大きいのも事実だった。大会主催者の判断としては正しかっただろうし、その大会に参加する身としては、従うほかなかった。さらに、大会自体が完全中止になってもおかしくないのに、世界中から来ている選手のために即席で100キロ以上のコースを作りマーキングをして、ボランティアを配置して、食料を運ぶ作業をしてくれた大会主催者に心の底から感謝した。1キロも走れずに帰国するなんて辛すぎるから。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

スタート時間が30分遅くなることが伝えられ、コースの高低図も発表された。プリンタがある訳でもなく、急いで手書きで高低図を紙に書き写し制限時間を記入した。いったいどんなコースかは分からなかったが、気休め程度にはなると思い書き写した高低図をズボンのポケットに入れた。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

スタート1時間ほど前になり、宿を出発しスタート地点に並んだ。すでに多くの人が詰めかけており、熱気が凄まじかった。三好さんや友達もスタート地点に来ており、この場の高揚する空気を分かち合った。100キロになってもUTMBはやっぱりUTMBな気がした。日本では味わったことのないこの盛り上がり、ワクワク。幸いにも雨は降っておらずスタートの時はレインウェアを着ずに走ることにした。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

スタート時間が近づくと10年間の映像が流れ、Vangelisのconquest of paradiseが流れる。続いてトップ選手の映像とともに、選手が入場しスタートラインの最前線に並ぶ。会場のボルテージはマックスに!文章だけでは音もリズムも色も伝えられないのが悔しいけれど、あの盛り上がりは忘れられない。近くの建物からは多くの人が身を乗り出して声援を送ってくれる。もう、町中がクレイジーになっているんじゃないかって言うほどだ。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
送信者 モンブラン登山とUTMB2012

なんと、このタイミングでCCCのトップ選手が帰ってきた。出来すぎた演出じゃないかというほど。そりゃ、盛り上がらない訳がない。UTMBの参加者全員でCCCの優勝者を讃えて、ついにUTMBのスタートの時がきた。カウントダウンが始まり、エディさんやモガミックスさんと、5,4,3と大声で叫ぶ。これぞUTMB。スタートの号砲と伴に、長い長い列が動き始めた。ついに始まった。UTMBがはじまった。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
送信者 モンブラン登山とUTMB2012ver2

シャモニーのメインストリートを走り抜ける。途切れることなく応援が続き、建物のベランダからも多くの人が声援を送ってくれた。俺も興奮して叫びながら走った。そして、メインストリートを少し抜けると、列車が並走した。すると、汽笛を何度も何度も鳴らして、選手を送り出してくれた。日本だったらまずないことだけれど、町全体でUTMBが受け入れられている証拠だと感じたし、とにもかくにもこの雰囲気が楽しくて楽しくて仕方なかった。そして、トレイルへと入っていった。トレイルに入った所でツルッと滑り、冷静になって気を引き締めようと自分に言い聞かせた。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012ver2

全体としては真ん中ぐらいにいたと思うが、かなりのハイペースでみんな走っていた。100キロと短くなったからみんながハイペースなのか、世界中から強者が来ているからハイペースなのかは分からないまま、とりあえず少し抑えめで走ることにした。さっそく町に着きエイドがあり、ドリンクだけもらってすぐに走りはじめた。トレイルに入る手前で私設エイドがあり、日本の方ですか?と聞かれ、おにぎりありますと言われた。こんな所でおにぎり!とうれしくなり、さっそく頂いた。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
送信者 モンブラン登山とUTMB2012

だんだんと薄暗くなってきたが、周りの選手はヘッドライトをつけようとしない。なんだか、みんなで我慢比べをしているのかと思うほど。俺は頭に付けていたGoProのカメラを片付けヘッドライトにした。と、その時に、ヘッドライトを置いたまま走り出してしまった。おっといけない。いつもやっていることでも、慣れない海外レースだとボンミスをしてしまう。ひとつひとつの動作を確認しなければと、自分に言い聞かせた。

スタートの時には降っていなかった雨も降り始め、雨具を着た。夜中にかけて気温はグンと下がるはずなので、体を濡らすと危険だから早めに雨具をきることにした。最初の大きな山を越える。トレイルはドロドロなところも多く、足が取られてしまうこともあった。思ったよりもスピードがでず、頭で考えていた到着時間よりも遅くチェックポイントについた。エイドにはパン、スープ、クッキー、フルーツ、チョコ、そして水やコーラ、ホットドリンクなどがあった。手当り次第に食べて食べて、すぐにエイドを後にした。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

その後も真っ暗なトレイルをひたすら走った。途中で友達とすれ違って話したり、面識のない日本人の方とも話したりして、楽しく進んでいった。日本人は背中を見ただけでなんとなく分かるから不思議なもんだ。ついに30キロ地点の大きなエイドであるコンタミーヌに到着。この時は、やっと到着したかというぐらいの感じだった。最初に飛ばしすぎたのが良くなかったのかもしれない。ここでもたくさん食べて、なぜか「ジャパン♪ジャパン♪ジャパン♪」とコール煽ってみたら、エイドのスタッフもノリノリ。調子に乗って「タケシ♪タケシ♪タケシ♪」とこちらも、エイドステーション中が盛り上がるほどのコールがかかり、俺も叫びながら踊ってみせた笑 こんなUTMBが楽しくて楽しくて仕方なかった。日本のトレランにはない自由な雰囲気。夜中にも関わらず町の人が応援してくれ、カウベルをカランカランと鳴らしまくっていた。この雰囲気が俺には合っている。エイドを出ると、「テラさん」と声をかけられる。なんとTDSを走り終えたばかりのジョリーさんとなっちゃんが応援に来てくれていた。それもこんな夜中かつ大雨の中を。想像もしていなくてとってもうれしかったしパワーが出た。二人の応援に元気をもらいつつ、残り70キロの旅に出た。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
送信者 モンブラン登山とUTMB2012

UTMB2012を終えて