UTMFの思い出~心折れ部~

UTMFが終わり、すでに何日も経った。
記憶の中でもしばらく前の過去のことになっている。

ゴールした直後も沸き上がるような喜びや成し遂げた感じはなかったが、しばらくたった今でもその状況は変わらない。
昨年の佐渡島トライアスロンや信越五岳トレランの後の方が、よっぽど感情が高ぶっていた。
それよりも2倍以上、トライアスロンと比較したら3倍以上の時間を経てゴールしたにも関わらず。

おそらく、今回の42時間を通して自分の中で何かが変わったのだと思う。
ひとつの出来事で、明確に変化することは少ないし、かなりの時間がたち振り返ってみると、あの時が変化のポイントだったということがあるけれど。
何がどう変わったかを、今ここではっきりと、自分の中でも整理することが出来ないが、その変化を自分の感覚が感じとっている。

ただ、楽しさ、うれしさというものは大きかった。
何かと言えば、仲間の存在だ。
これにつきる。

From UTMF2012心折れ部&金環日食

2日目の朝から晩まで12時間以上もかかった天子山地。
かなりハードな行程だったけれど、ここを降りた時に真っ暗闇の中から「テラマックスだー、テラさん、ケンちゃん、よくきたね。」と声が聞こえた元気になった。
魂が蘇った。そこでリフレッシュして、残りの27キロを進むパワーが出た。

さらに、その後、数百人に追い抜かれた。
今までレースでこんなにも多くの人に抜かれることはなかった。
シングルトラックだと後ろから煽られたり、嫌な気もしたが、すぐに違う気持となった。
知らない人でも、「あと少し、ファイト」「一緒に頑張りましょう」などと、声をかけてくれた。
そんな抜いていく人の中には、仲間もたくさんいた。
心折れ部の仲間には何回も会って、声を掛け合った。
そして、インドで会い初めてハセツネに一緒に出た親友にも会った。

ゴールでは、心折れ部の仲間が待っていてくれて、旗を渡してくれて、一緒にゴールを分かち合った。
ただただ、仲間の存在がうれしかった。ありがたかった。

UTMFのコースからは綺麗な富士山が何度も見えた。
朝日を浴びる富士、夕日を浴びる富士、青空に映える富士、雲海に浮かぶ富士。
さらに、1日目の夜は満天の星空だった。とっても美しくて、空を見上げた。
トレイルもシングルトラックもあれば、砂利道も、ロードも、急な坂も、いろいろあった。
でも、それらはあまり強い記憶ではなく、仲間の存在が42時間を通して一番の記憶となった。

From UTMF2012心折れ部&金環日食

俺が山を走りはじめ、数年間はずっと1人で走っていた。
走る友達がいなかったから大会に行っても、誰とも話さずレースを走りそのまま帰る。
練習も1人で山に行って、走って帰る。
それを数年間ほどしていた。
まあ、続いていたから、本当に山を走ることが好きなんだろう。

From UTMF2012心折れ部&金環日食

でも、この1、2年は仲間が出来た。
「心折れ部」というとても素敵な仲間。
個人的にも自分の性格にもあったチームだし、みんなお互いに合っているのだと思う。

「Alone Together」というチームの言葉。
走るのは一人だけど、同じトレランをする仲間として心は一緒。そんな感じ。
心折れ部の人は、みんな人に頼ることなく、一人一人でも自分だけで成り立つ独立した存在。
だから、心折れ部以外のトレラン仲間からは、心折れ部は自由だとか、バラバラだとか冷たい(笑)とか言われたりもする。
でも、そんな独りで歩ける人が集まっているから、馴れ合いな感じはなく、でも楽しむ所は一緒に楽しんで助け合ういいチームになっていると思う。

そして、Tシャツや旗をデザインしてくれている渋井さんが言っていた「トレランはそもそも趣味なんだから楽しいこと。でも、その趣味をもっと楽しくするのが心折れ部」と。
この考え方は、すっごくいいなと思う。俺はどんなことでも、楽しもうと思う性格なので、楽しいことをさらに楽しくなんてコンセプトには、とても共感するし、素敵な発想だなと思った。
Tシャツには「Brave to Enjoy(楽しむ勇気を)」という鏑木毅さんの言葉も書かれている。

From UTMF2012心折れ部&金環日食

と、こんなことを改めて気づかせてくれたのが、俺が走りはじめた頃からよく知っている友達からのメール。
初めてハセツネを出てボロボロになり、その後も1人で走り続けていた、そんな頃もしる友達。
そんな友達が、UTMF完走後にメールをくれた。

「仲間ができたのは、ちょっと前とは大きな違いなんだろうね。写真の笑顔を見ているとそんな気がする」

ああ、そうなんだ。
やっぱり、心折れ部の存在は本当に大きいんだなと実感した。
と同時に、一番好きな写真家である星野道夫さんの言葉を思い出した。

===

「いつかある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。
たとえばこんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろう。
もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどう伝えるかって。」

「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いて見せるか、
いや、やっぱり言葉で伝えたらいいのかな」

「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって…。
その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだって思うって。」

星野道夫「旅をする木」

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星野のさんの言葉は、ターニングポイントでいつも心にすっと入ってくる。
そして星野さんの言葉は、何も意識せず通りすぎてしまった大切な場所を思い出させてくれる気がする。
こうして、UTMFのことを雑文のような日記で書き留めることにも似た感じがします。

From UTMF2012心折れ部&金環日食
From UTMF2012心折れ部&金環日食

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