雨上がりの7時間47分8秒

言い訳が美しくないと人間が感じたのはいつからだろうか。
6時40分、それはスタートしてから10分後。
すでに僕は言い訳を考えはじめた。
情けないなと思ったけれど、それよりも肉体的、心肺的な辛さの方が勝っていた。

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舞台は北丹沢山岳耐久レース。日本3大山岳耐久レースの1つであり、登りがキツいのと梅雨明け前後ということもあって雨と暑さそして湿度が高いことが選手を疲労させるので有名だ。昨年初めて参加して、なんとか完走した。そして、今年も出場することにしたのだ。

今年のレースの前から僕はなめていた。
昨年完走していること、この大会(44.24km)よりも長いレースを何度も走り切っている経験があったことから完全になめてしまったのだ。本当はかなりハードなコースなのにも関わらず、練習をさぼったのだ。ジョギングにしろ、水泳にしろ。これが、決定的な問題だった。

自分の練習不足の他にも、エイドでチョコレートなどの食べ物がなかったのも大きな理由だったのは事実。昨年はチョコレートや飴などがたくさんあった。それを期待して、今年はチョコなどを持って走らなかった。大きな誤算だった。でも、これも言い訳だ。

言い訳を書くのはここまでにして、レースについて書こう。レースは6時30分から始まるため、前泊が必要になる。今年はスタート地点の青根緑の休暇村にあるロッジに泊まることにした。ロッジ一棟で4200円、友達と2人で泊まったので、2100円プラスマッットレスと毛布500円と安かったのたが、想像を超えるボロさだった。ベニヤで作ったような4畳半の掘建て小屋。僕も友達も海外貧乏旅行をしてきた身だったので良かった。そういった旅をしていない人だったら、キレて帰っていることだっただろう。

夕食のおにぎりを食べ食堂でちょっとつまみつつ、早めの夕食を終え眠りについた。夜は激しく雨が振り、屋根のトタンを強く叩いた。十分に睡眠を取り、朝の5時30分に目を覚ました。足にサロンパスを塗り、両膝と両くるぶしにニューハレのテーピングをして、荷物をバッグに詰めた。おにぎり1つとパンを2つVAAMドリンクの朝食を済ませ、スタートライン。ここに立つと男の臭い匂いが漂ってくる。屈強な男がこれだけ集まれば致し方ない。ついに始まるなという気持が高まった。

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6時30分にスタート。まず260メートル程登る。この時点で辛くなった。足が重たい。こんなぐらいの登りなんて、さくっと越えなければならないはずなのに。思うように体が動いてくれない。なんとか頑張って走り、たまに歩く。そんなことを続け、やっと下りに。アスファルトがしばらく続くのだが、走れない。ゆるやかな下りであるはずなのに、走れないのだ。歩いてしまう。走れない。情けない。もう、リタイアしたいと思いはじめた。未だかつてこんな事はなかったのに、もう心が折れ始める。体力がないと心はこんなにも早く折れるのかと思った。疲れたと思い、リタイアしたいと考えはじめると、リタイアする言い訳ばかり考えはじめる。頭がふらふらするだとか、暑さでボーッとするとか。

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第1関門でリタイアしようと考え、まずはそこまで進もうと決めて走った。最初のキツい登り。880メートルほど急な坂を登る。なんとか登る。歩いているけど、決して休まなかった。それだけが唯一の救い。第1関門にいたる1280メートルの峠をすぎた辺りから、少し体が軽くなった。これなら行けるかもしれない。下り坂を走り降りる。下り切ったところに神ノ川ヒュッテがある。ここが第1関門かつエイドステーション。水を飲み、頭から水をかけてもらう。ハイドレーション(水を入れるパックからチューブが出ていて吸える物)にも水を入れてもらう。そして、持ってきていたおにぎりとパンを食べる。さらに、エイドに設置されたキュウリとバナナを食べた。いつもならチョコレートもあるのに、今年はなかった。チョコはすぐにエネルギーになる強い見方。エイドで食べられると思い、持ってこなかったのがミスだった。今さら仕方ないので、再び走り始める。

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すぐに登りが始まる。420メートルを登る。420メートルというとたいしたことないように聞こえるが、これがなかなかキツい。でも、さきほどの880メートルと比べると足は軽い。標高差もハードさを判断する要素ではあるが、付け加えて斜度も大きな要素だ。当たり前だが、急な坂は筋肉と心肺機能に負担が大きい。それでも何とか踏ん張って一度も休まず歩いて登り切った。ここからは緩い下り坂が続く。アスファルトと砂利道だ。おそらく8キロぐらい続くのだから、単調だ。100キロマラソンのようにロードを走る大会であれば、アスファルトを走っていても走ることが嫌にならないのだが、トレイルの大会なのにアスファルトになると一気に走る気持が萎える。でも、ここで歩くのか走るのかでは大きく差が出るので、負担の少ないすり足走法で走り続ける。ここは自分の心の中で、天使と悪魔が戦っている状態だった。

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ここを走り終えると、第2関門に到着する。ここまで着たんだから、リタイアは止めようと思った。第2関門で水を飲む。しかし、ここでもチョコがない。なんてこった。チョコレート代をけちったのだろうか。エネルギーがないので、VAAMジェルとカロリーメイトを食べる。さて、すぐに登りが始まる。823メートル一気に登る。ここが最大の難所だ。筋肉が疲労し切ったところでこの大会で最も高い地点を踏まなければならないのだ。何度か立ち止って休みながら登った。前を行く人についていけず、後ろから来る人に追い抜かされた。頂上は姫次で1433メートルなのだが、途中にある風巻ノ頭という場所が一瞬頂上と勘違いしてしまう。ここに到達して頂上だと思ったら、まだ400メートル弱残りがあると知ると疲れがどっと出る。でも、去年の経験から風巻ノ頭をしっていたので、精神的にはよかった。けれど、第2関門から風巻ノ頭までは急な登りで本当に辛かった。風巻ノ頭から姫次までの方が斜度が緩くなり、まだましだった。

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姫次の前で私設エイドがあった。ここに到達するまでお腹が鳴るぐらい腹が減っていた。とちゅうでパンを2つ食べたが効果は薄かった。コーラとチョコレートとかりんとうをいただく。うまい。うますぎる。気分的な物も大きいかもしれないが、チョコレートを食べてから10分後ぐらいには本当にエネルギーが出てきて、力強く走れた。時計を見ると、ここから良いペースで走り続ければ、去年のタイムを切れる。さらに8時間切りも狙える状態だった。

下りの足のステップはトレランを始めた頃と比べるとかなり上手くなっているので、軽快に下りつづけた。足首にニューハレのテーピングをしていたのも良かった。さらに、昨夜の雨で路面は湿っていたが、水が溜まるような状態ではなく粘土質になっているだけだったので、足への負担も少なくコンディションは良いものだった。姫次の頂上からゴールまで1時間弱ぐらいだったと思う。昨年のタイムから30分縮めてゴール。

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第1関門までは本当に辛くて、初めてリタイヤしようと思った。けれど、なんとか次の関門まで行こう、そして今まで一度もリタイアをしたことないのだから何とか完走しよう。その想いだけで走ってよかった。そして、リタイヤしようと考えはじめると、止める理由ばかり考えはじめてしまう。一方で1時間以内に走り切れば昨年のタイムを越えられると思えば、なんとかしてタイムを縮める方法を考える。やっぱり自らの意志は前向きに持つことが重要だと感じた。

■第12回大会実施要項
大会日:  2010年7月4日(日)開催 (雨天決行/暴風雨以外)
会 場:  相模原市緑区(旧津久井町)青根(青根緑の休暇村)
受 付:  青根緑の休暇村
開会式:  6時00分~
スタート: 前回大会完走者スタート・・6時30分
      その他スタート・・・・・・・・・・7時00分
      フィニッシュ制限時間(12時間)・・18時30分・19時00分
コース:  青根緑の休暇村(スタート)→平丸→立石建設→
      鐘撞山→神ノ川ヒュッテ→日陰沢源頭→広河原→
      神ノ川園地→風巻ノ頭→姫次→平丸分岐→
      青根緑の休暇村(フィニッシュ)
距 離:  44.24㎞
天気:曇り 26度 (午前7時現在)

■結果
第1関門 03:19:48 (18.59km)
第2関門 04:57:02 1:37:14(29.42km)
Finish 07:47:08 2:50:06(44.24km)
出場種目 44.24km男子39歳以下
距離 44.24 km
タイム(グロス) 7:47:08
タイム(ネット)
種目別順位 271/602
総合順位 482/1191

<教訓>
・登りでは今この瞬間に負けない。ただそれだけ。
・平地はいかに歩こうとする心に打ち勝ち走り続けるか。
・下りは滑らないように気を付けながらいかにスピードをだすか。

<次回への覚え書き>

■大会前

・青根緑の休暇村にあるロッジは1棟4200円。毛布とマットレス500円。ただしボロい。

■大会

・エイドは水しかない可能性がある。チョコがなかった。
・急な坂が多くきつかった。登り対策が必要。
・キャメルバックは肩の紐を短くし体に密着させると揺れずに楽。
・ニューハレのテーピング(膝とくるぶし)とスパッツ(スポーツ用4DMタイツ)をのおかげで足はほとんど痛くならなかった。
・大会中の気温の変化は大きかった。曇ったり晴れたり。
・キャメルバックに空気が入っていると、走行中に水が揺れるやすいので、空気は抜く。
・ゼッケンは短パンにつける。Tシャツだと汗でゼッケンが取るため。
・襟つきTシャツ(首がバックの肩紐でこすれないから)

■大会後

・スリッパがあると良い。靴を洗った後にはくため。
・温泉は混雑する。宿泊棟の風呂は比較的空いている。

<実際に食べたモノ>

・アミノバイタル顆粒 1袋
・アクエリアス 2リットル+エイドの水1.5リットルぐらい?
・アミノバイタル ジェル 1パック
・ヴァアMジェル 1本
・カロリーメイト 2本
・おにぎり 1個
・パン 3つ

※エイド
・水4杯
・バナナ 1本
・塩 少々
・キュウリ
・チョコ、かりんとう(私設エイド)

<実際の服装>
・キャメルバック(モンベル)
・トレランシューズ ラッキーチャッキー26cm《ザ・ノース・フェイス》
・帽子
・ニューバランスのラン用短パン
・タオル
・時計
・靴下(HALISON ドラロンコットンソックス 25-27cm)
・スパッツ 4DM ロング
・Tシャツ マウンテンハードウェア
・ニューハレのテーピング 両膝と両足のくるぶし
・パンツ ユニクロ シルキードライパンツ
・軍手
・レインウェア (Penfield) 着なかった

<実際にレースに持って走ったもの>
・携帯電話
・トイレットペーパー 使用せず
・地図(ビニール袋に入れる)
・財布(お金、カード最小限、保険証) 使用せず
・ゴミ袋
・膝のサポーター 使用せず
・足首のサポーター 使用せず

<荷物預かり所に置いていったもの>
・靴下
・速乾性長袖
・ヘッドライト
(レース後の着替え)
・パンツ
・靴下
・シャツ
・ズボン
・エアサロンパス 使用せず
・音楽プレイヤー(iPod) 使用せず
・タオル 使用せず

<上記にないが忘れてはならないもの>
・ゼッケンなど

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