どこかへ向かう者たち

スーツケースを引っ張るサラリーマン。
修学旅行でやってきた中学生。
外国からの観光旅行者。
大きなバックパックを背負った若者。
東京見学にやってきたおばちゃんたち。
駅に横付された車から降り、新幹線に乗る芸能人。
ディズニーランド帰りで大きな袋を抱え、ぐったりとした少女達。
孫に会いにきたのか、うろちょろしながら歩くおじいさんとおばあさん。

彼ら、彼女らは東京駅で見かける人々だ。

最近は東京駅の周りにいることが多い。
特に東京駅の八重洲側(丸の内と反対側)。
そこで日々見かける光景だ。

東京駅からは東北、長野、名古屋や大阪方面の新幹線が出ているだけでなく、北海道から九州まで日本各地への高速バスの発着の場でもある。様々な場所を目指す人々が、日々入れ替わりやってきては、目的地に旅立って行く。

本当に色々な風貌の人が様々な大きさの荷物を抱え、老若男女ありとあらゆる人がいる。酒を飲みながらバスを待つ人、漫画を読みながら待つ少年、地面に座り込む女の子、楽しそうに駅弁を物色するおばちゃん、走りながら飛び乗るサラリーマン、はじめての新幹線にドキドキする子供、何らかの覚悟を決めて旅立つ人。おそらく東京駅は旅人の多様性といった観点からは、日本一の場所だと思う。新幹線があり、在来線、特急、豪華な高速バス、格安高速バス、もちろん、タクシーも自家用車も。羽田や成田経由で飛行機に乗る人も多く行き交う。様々な交通手段だけでなく、様々な目的地、様々な時間帯、様々な価格帯の乗り物が集結している。結果として多種多様な旅立つ人が集まっては、去って行く。

目の前にいる人の旅を勝手に想像する。そんな想像はほとんどの場合ハズレているのだろうけど、自分が経験したことのない旅を擬似的に味わえる。どこかへ向かう人を見ているだけで、自分までワクワクする。このバスは富良野行きだ。一人で待っている。荷物は小さい。服はラフだ。実家が富良野にあって、帰省するのだろうか。。。若い青年が真新しいカバンを背負っている。今は夏休みの時期だ。どことなく不安げだ。初めての一人旅なんだろうか。。。などと。他人の旅を想像し、これからの旅でどんな出会いが待っているのかと思いを巡らす。すると他人の旅を旅した気分になる。自分では経験したことのないような旅をする人が、目の前にたくさん溢れている。偶然今この場で同時に居合わせた人が、数時間後には全く違うところにいる不思議。もちろん、目の前を行き交う誰かは俺の想像が全く及ばない人生を送って、全く想像もつかない旅をこれからするのだろう。でも、そんなどこかへ旅立つ人の一瞬をかいま見れただけで、楽しく想像の旅をすることができる。

台風が去った秋晴れの空の下で「どこかへ向かう者たち」を思う。

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