10時28分偶然の巡りあい:池澤夏樹の世界文学ワンダーランド

最近はテレビの電源を入れるようにつとめている。
テレビの情報は受け身の情報なので、自分が興味を持っていない情報も多いが、自分では気づかなかった潜在的に興味のあることに気づかせてくれることがあるから。

偶然テレビをつけた時間は10時28分。何と池澤夏樹さんが出ていた。池澤夏樹さんはエッセイを中心に読んでいて大好きな作家だ。何の番組だろうと思って調べると、今日の10時25分から「池澤夏樹の世界文学ワンダーランド」という全8階の番組がスタートしたらしい。なんというグッドタイミング。世界の文学はほとんど読んだことがない、もっといえば日本の文学を読むことも少ないのだ。ただ、興味はとても強い。これをきっかけにでも、テレビで各作品のあらすじや空気感を掴んで、実際に本を読んでみようかな。

池澤夏樹さんは星野道夫さんをきっかけに好きになった方なのだが、ETV特集で「我々はどこへ行くのか 池澤夏樹とゴーギャン、文明への問いかけ」という番組も先日やっていたらしい。これも面白そうで見たかった。8月の頭にゴーギャン展に行ったのだけれど、この展示が良かったから。「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」という作品も非常に良かったのだが、ゴーギャンと言う人物の生き方、そして訴えたかったこと、もがいていたこと全てに対して共感と興味を持っていたので。

なんだろうか、池澤さんは自分の経験したことのないことに関しても、詳細なことまでリアルに想像することができ、長期的かつ総体的に考え、表現できる希有な方なのだろう。
クリエイティブライティングで11月末にお会いして少し話せる予定なので、非常に楽しみだ。

第1回「世界文学はおもしろい」【講師】作家…池澤夏樹

21世紀、異文化が交錯する混迷の時代。世界は進むべき方向を模索している。作家・池澤夏樹さんは、文学にこそ時代を読み解くヒントがあると考え、独自な視点で新たな「世界文学全集」を編集した。池澤さんが魅了された文学作品の朗読を交えながら、私たちが生きる今と文学を語りつくす。

第1回 世界文学はおもしろい 10月5日 10月12日
第2回 恋はサスペンス-『マイトレイ』 10月12日
第3回 名作を裏返す-『サルガッソーの広い海』 10月19日
第4回 野蛮の幸せ-『フライデーあるいは太平洋の冥界』 10月26日
第5回 戦争は文学を生む-『戦争の悲しみ』 11月2日
第6回 アメリカを相対化する-『老いぼれグリンゴ』 11月9日
第7回 アメリカ化する世界-『クーデタ』 11月16日
第8回 さまよえる良心-『アメリカの鳥』 11月23日

知る楽 探究この世界 池澤夏樹の世界文学ワンダーランド <新><全8回>
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/mon/index.html

ETV特集で「我々はどこへ行くのか 池澤夏樹とゴーギャン、文明への問いかけ」
http://www.nhk.or.jp/etv21c/update/2009/0913.html

第1回 世界文学はおもしろい 10月5日
池澤さんが独自な視点で編集した新たな「世界文学全集」。池澤さんの編集方針は、20世紀後半に書かれた秀作を、欧米の作品にかたよらずに選ぶことだった。今回番組で取り上げる7作品も5つの言語で書かれ、世界各地を舞台にしている。旧植民地出身の女性作家ジーン・リースや母国アメリカを痛烈に風刺した作品を書いたアメリカ人作家ジョン・アップダイクなど、書き手もさまざま。新しい世界文学の魅力を池澤さんが語る。

第2回 恋はサスペンス-『マイトレイ』 10月12日

恋はサスペンス-『マイトレイ』
『マイトレイ』(1933)は、ルーマニアの作家・宗教学者のミルチャ・エリアーデが、自らの体験をもとに書いた恋愛小説。主人公はアランという23歳のルーマニア人の青年と、マイトレイという16歳のインド人の少女。異なった文化を背負った男女の恋愛が描かれている。この作品の魅力は、官能と精神が絶妙のバランスで描かれているところだと池澤さんは言う。インドを舞台に若き男女が文化を越えて結ばれようとするラブストーリー『マイトレイ』の魅力に迫る。

第3回 名作を裏返す-『サルガッソーの広い海』 10月19日
『サルガッソーの広い海』(1966)は、作家ジーン・リースが76歳のときに完成させた作品。リースは、カリブ海に連なる西インド諸島の一つ、ドミニカ島の生まれ。当時は、イギリスの植民地だった。リースは、植民地生まれであることで差別され、苦労続きの人生を送った。『サルガッソーの広い海』はイギリス文学の傑作『ジェイン・エア』に登場する脇役、植民地生まれの女性を主人公にした物語。いわば、『ジェイン・エア』を裏返した小説だ。アイデアと技法が鮮やかに決まった傑作を池澤さんが読み解く。

第4回 野蛮の幸せ-『フライデーあるいは太平洋の冥界』 10月26日
『フライデーあるいは太平洋の冥界(めいかい)』(1967)は、フランスの作家ミシェル・トゥルニエが、ダニエル・デフォーの小説『ロビンソン・クルーソー』(1719)を下敷きに書いた作品。トゥルニエ版では「野蛮人」フライデーの登場以降、デフォー版と全く別の展開を見せる。「野蛮」というものに、ネガティブな価値しか見出さなかったデフォーの時代と違い、トゥルニエが作品を書いた20世紀半ばには、それまで「野蛮」とよばれてきたものが、実は独自の世界観と知恵を持った文化だと明らかになった。その思想がこの作品にも影響を与えたのだ。

第5回 戦争は文学を生む-『戦争の悲しみ』 11月2日
『戦争の悲しみ』(1991)は、北ベトナム人民軍の兵士としてベトナム戦争を戦った作者バオ・ニンによって書かれた。これまで、ベトナム戦争に関する知識や情報は、その多くがアメリカ側および南ベトナム(ベトナム共和国)政府側のものだった。しかし今や、北ベトナムの人があの戦争をどう見ていたかを『戦争の悲しみ』で知ることができる。小説の主人公キエンは、かつてベトナム戦争を戦い、40歳になった今、ハノイで作家になっている。そのため、この小説は戦争に関する小説であると同時に、主人公が戦争に関する小説を書くという過程を体験しつつある自分を語る小説となっている。

第6回 アメリカを相対化する-『老いぼれグリンゴ』 11月9日
『老いぼれグリンゴ』(1985)は、「メキシコ革命」を背景にした一種の歴史小説。物語は、革命の初期、一人の年老いたアメリカ人「グリンゴ」が国境の川を越えてやってくるところから始まる。「グリンゴ」とはアメリカ人男性を指す蔑称だが、時に愛情も含むという微妙な言葉。近代化しすぎて迷路に迷い込んだアメリカに絶望し、川の南のメキシコに人間的なるものを求めやってきた老いぼれグリンゴ。作者のカルロス・フエンテスがアメリカに対する批判を込めて書いた作品だ。

第7回 アメリカ化する世界-『クーデタ』 11月16日
『クーデタ』(1978)は、今年1月に亡くなったジョン・アップダイクの作品。戦後アメリカを代表する作家の一人だ。これといった特徴をもたない「普通のアメリカ人」を主人公に、『走れウサギ』(1960)に始まる「ウサギ四部作」や『カップルズ』(1968)など、アメリカを舞台に多くの小説を書いた。今回取り上げる『クーデタ』の舞台は、アフリカにある架空の国「クシュ」。しかし実は、この作品もまたアメリカを書いた小説だと池澤さんはいう。つまり、アメリカの外にいったん出て、そこに設定した「クシュ」という国を透かして見えるアメリカの像を描くといのがアップダイクの執筆意図だったのだ。

第8回 さまよえる良心-『アメリカの鳥』 11月23日
アメリカの女性作家メアリー・マッカーシーの『アメリカの鳥』(1971)。主人公ピーターは、鳥好きの少年。この小説は、ピーターが、渡り鳥のようにアメリカから海を越えてヨーロッパへと渡っていく話であり、主人公が現実のなかで人生や社会についてさまざまに考え、悩み、時には傷ついたりしながら、次第に成長していく「教養小説」だ。主人公ピーターと池澤さんは同じ年。共に1945年の生まれだ。そのため、時代の空気も、世界的な事件も、その背景も、共有する部分がとても多いという。この作品を「まぎれもない傑作」と語る池澤さんが、その魅力を語る。

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