道の先まで行ってやれ! 石田ゆうすけ 

夏になると極端に本を読む頻度が減る。とはいっても、この本は読まなければ。

発売してから2、3日後に八重洲ブックセンターへ行くと、この本が地下一階に平積みされていた。その中の一冊を手に取り、帰りの電車で読み始めた。僕にとって本を読む時間は電車の中がほとんどで、東京駅から阿佐ヶ谷までの20分ぐらい。それでも2、3日で読み終えるほど、テンポが良く読みやすい本だった。石田ゆうすけさんの本はいつも読みやすい。表現もすんなりと入ってくるのだが、文章の流れや段落構成が読む人のリズムを考えて書かれているからだろう。

「道の先まで行ってやれ!」自転車で、飲んで笑って、涙する旅 石田ゆうすけ著

まるでロードムービーを見ているような一冊だった。
日本各地を旅して出会ったことが、著者の視線を通して自然体で書かれた紀行文。
この本を読んでいると、自分が自転車をこいで旅をしているかのように、風景が流れていた。

食べ物、人、風景、建物。
これらが自転車のスピードで流れていく。そんな旅の話し。
このスピード感が心地よい。人間が認識できるギリギリの速さが自転車の速さで、それ以上速いと息が詰まる。
自転車の速さで流れるロードムービーだから、読後のさらっとした心地よさがあるのだろう。

動力に頼らないから出会える風景がある。人がいる。
自動車だと速すぎて見逃してしまう風景、自動車だと止まることができず見れない風景。
自動車の中と外は切り離された世界で、気軽に話しかけたり話しかけたりすることは少ない。
自動車に限らず飛行機でも、新幹線でも、バスでも同じ。

でも、人力の旅は違う。
徒歩や自転車でしか出会えないことがあることを存分に伝えてくれる本になっている。

もちろん便利な車にも乗りたいし、バイクにも乗りたい時もあるだろう。
けれど、それ以上の味わいが自転車の旅にはある。
人力で移動をして、その土地にそった旅をしていると、自然と人とのふれあいが生まれる。
人と触れ合うとうまい食い物にも出会える。
すると、旅がさらに楽しくなる。

そんな偶然の出会いを求めて著者はまた自転車をこぐのだろう。

いい出会だなぁ。
いい旅だなぁ。

そんな風に思う。一人一人の旅はその人にしか訪れなかった出会いの連続で、全ての旅が思い出深いものだと思う。
でも、一人で旅していると自分以外の旅をかいま見ることができない。けれど、旅人の話しを聞いたり、こうした本を読むと自分とは違った旅を感じることができて、心が豊かな気持になる。そして自分もまた旅がしたくなる。

なんて、書いたけどゆうすけさんがどんな風に旅しているかが、具体的にイメージできて面白かった。風景に出会ったり、その土地の食べ物を食べたり、人に出会ったりした時の反応が普段のゆうすけさんそのままで良かった。ゆうすけさんを知っているから、よりリアリティーを持ってイメージできたのかもしれない。

やっぱり人力の旅はいいと思う。チャリで旅をしたくなった。
さあ、そろそろチャリでも買って、気が向いた方へ向かって旅に出ることでもしようかな。

やっぱり旅はいいねー。と思える一冊です。ぜひ、手に取って読んでみてください!

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