日別アーカイブ: 2009/7/11 土曜日

森と氷河と鯨 星野道夫

「森と氷河と鯨」を星野道夫さんの著書の中でベストだという人がいる。
それはただ単に実質的な最後の著作であるという意外にも理由があると思う。
確かに他の星野さんの本とはちょっと内容が異なっている。

この本を通して知る星野さんには研究者っぽさがある。
アラスカに住む様々な族のルーツを探りに大学の研究所に行ったり博物館へ調べにいったり、老人に話しを聞きにいったり。
人、文化、神話のルーツを追い求めて行くための一連の行為が記されている。

他の本では自然の中での営みを通して、感じとったことを主に書いている。
この点で「森と氷河と鯨」は特徴的な本だ。

最後の著作が「森と氷河と鯨」だったことから、一人の人間が生きていく流れを感じとれる。
他の著作があったからこそ、この本の方向性に行き着いたのだろうと思う。
もっと言うならば、アラスカを旅し、アラスカに住み、その結果としてこの本のテーマに行き着いたのだろう。
アラスカという大地をきっかけに興味の対象が深く、広くなっていく。

一人の人間を本と言うものを通して見る。
興味の対象の広がりなどが感じとれてうれしい。

こんなことを感じたのも、自分の経験との重なりがあるからだろう。
旅を通して本に出会い、書くということに出会い、写真に出会い、走ることに出会い、人に出会い、そして今は文化や信仰に興味を持ち始めた。
自然の美しさはもちろん大好きだが、旅をしていると人に出会い、その根底にある目には見えない習慣や文化や信仰に興味を持っていく。

何かを始めると、その枠に止まらず、その周辺の物事に興味を持つ。人間が生きていくということはこの連鎖なんだろうと思う。全てはつながっている。

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