星野道夫と池澤夏樹

以前にも紹介したがNHKの「知るを楽しむ」という番組で星野道夫さんについて取り上げられていた。今回が4回シリーズの最後で池澤夏樹さんが星野道夫さんについて語った。

星野さんと池澤さんに共通する、自然に対する向き合い方や、生きる事、死ぬ事に対する考え方は以前から強く共感している。今回の番組で非常に良かったのは池澤さんが星野さんについて語るシーンが見られた事だ。池澤さんが星野さんについて書いている本は色々とあり、ほとんど読んでいると思う。しかし、池澤さんが話す映像は初めて見た。文字だけからは伝わってこない、顔の表情や間の取り方などから星野さんに対する思いがにじみ出ていた。

星野さんに対する思いが非常にこもった語りかただった。このように言うと、二人は何度も語り合い、寝食を共にした仲のように感じるが、池澤さんと星野さんは、たった2回しか会ったことがない。ただ、会った回数でお互いの関係性は全く決まらないと思う。自分の場合も親友は会った回数では決まらない。良く会う友も、滅多にあわない友もいる。どちらにしろ、そんな男同士、心の底から信頼し合えるということはいいもんだ。お互いの考え方や価値観、そしてお互い表現する者としての作品を認め合っていたからこそなんだろう。

池澤さんは星野さんをこう表現している。安全で便利な都会の生活はそれで良いのだが、何かしらの違和感をほとんどの人が持っている。一方で本当にリスクをおって生きるということはとてつもなく大変な事。星野さんは日本人を代表して、それを体感した男で日本人に伝えてくれた、と。

また、池澤さんの話す言葉の選び方にも心地よさと納得感をおぼえた。現代人の生活が便利で危険のない状態になっていることを人々にとって「幸福」だとは言わず、「安楽」という表現をしていた。この表現は非常にしっくりきた。そうだ、幸福ではなく「安楽」だと。辞書によると安楽とは「生活の苦労がなく、楽々としている事。」とある。そして、現代都会人がいる居場所に対して、「現代都会人はせめて何を捨てたかを覚えておきなさいよ。いざという時に戻らないといけないから。今いる場所が本来の場所と思うなよ。」と語った。その言葉は、恐怖と言うか危機感を感じるほどの鋭いものであった。

もちろん池澤さんが紹介していた星野さんの本の一部である、「生」の最後に「死」があるのではなくて、「生」とともに「死」は共存している、といったことや「ノーザンライツ」に出てくる「遠い自然」ということの大切さには全面的に同意する。そんなとても興味深い番組でした。

この番組ではないですがガイアシンフォニーというドキュメンタリー映画があります。この第3番では星野さんが取り上げられていて、これを持っているので、見たい方はいつでもDVDをお貸しします。オススメです。

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