野茂英雄という美学

2008年7月17日 現役を引退すること表明いたしました。

野茂英雄は圧倒的だ。
とどまることのない、野球への情熱。

野茂がメジャーへ行った時と今では全く状況が違う。
制度においても、日本球界の視線、メジャーでの習慣、全てにおいて前例がなく、それをひとつひとつ乗り越えゆく必要があった。

youtubeで、当時の映像を見たら、パリーグの会長も近鉄の監督も怪訝な顔つきで話していた。
さらに、野茂がメジャーに行った時はメジャーリーグがストライキ中だった。
そんな状況を全て一人で引き受けて、挑んでいった。

そして、1年目から結果を残した。
ノーヒットノーランも達成した。
でも、いいことばかりではなく、故障し結果が出ず、チームを移り、年齢とともに体力も衰え。
それでも、彼は野球をやり続けた。
ただただ、トレーニングをしメジャーでプレイすることに邁進した。

引退の時やノーヒットノーラン、メジャーでの100勝、日米200勝の時は騒がれた。
しかし、それに達するまでの紆余曲折、そして日々の地味なトレーニングが彼の野球人生のほとんどだ。
話題にならないときの彼の選択、行動に野茂英雄という人間の魅力が詰まっていると思う。
華やかではない、鮮やかな人生でない時にこそ、人間の本心が表れ、その時こそ人間の真の姿が現れる。
そんな日々から感じる、愚直なまでの野球への想い、行動に魅了される。
彼の中にある自分の生き方の美学、これだけは何があろうと守って生きているのだと思う。
絶対に譲れないもの。

下手にかっこうをつけない。
常に全てがうまくいくことはない。
そんな自分も全て受け入れて、そのままを出していく。
他人からの見てくれを意識するのではなく、全人格の自分で生きている。

ただ、そこで甘んじる訳ではなく、どんな状況だろうとメジャーを目指す。
先がどんなに長い道のりだろうと、一歩一歩次を目指す。
今現在の位置から、地味でも目の前の一歩を前進する。
マイナーリーグに降格しようとも、怪我をしようと、ベネズエラリーグにいこうとも。
当時の日本から、メジャーに行った、その気持ちは永遠に続いていたんだろう。

また、彼は中途半端な気持ちで日本に戻らなかった。
結果的に取ってくれる球団があったら、日本でも投げていただろう。
でも、その前に全力でメジャーに残りたいと、なんとかしようとする。
それでもダメだったら、日本の球団だったのだろう。
それだけ、野球への強い想いがある。

「今日だけじゃないですけど、野球は楽しいもんだと実感しています。」
(1度目のノーヒットノーラン後のコメント)

メジャーで1回目のノーヒットノーランをした瞬間のガッツポーズを覚えている。
そして、その後の笑顔も。

一度も会ったことのない、僕にまで夢を与えてくれる野茂英雄はまさにヒーローだと思う。

彼は今後、メディアの前に出ることがなくなるかもしれない。
社会の注目を浴びることはなくなるかもしれない。
そして、彼の動向を知ることはなくなるかもしれない。

だとしても、彼はかっこいい人生を送るのだろう。
僕は強くそう思う。

野茂に聞く

 ――決断に至った経緯は。

 「中途半端にしていてもしようがないし、けじめをつけないといけない。ファンにも報告しないといけない。どこも取ってくれる球団はないと思う」

 ――現役続行への未練はないか。

 「自分の中ではやりたいが、プロ野球選手としてお客さんに見せるパフォーマンスは出せないと思うし、同じように思っている球団も多いと思う」

 ――4月にロイヤルズで大リーグ復帰を果たし、ある程度納得した部分はあるのか。

 「そんなことは全然ない。引退する時に悔いのない野球人生だったという人もいるが、僕の場合は悔いが残る。自分の中ではまだまだやりたい気持ちが強いが、自分の気持ちだけで中途半端にしていても周りに迷惑をかけるだけだと思った」

[ 2008年07月18日 ]


(笑顔で仕事をする親父@インドの路地)

 「僕の場合は悔いが残る。自分の中ではまだまだやりたい気持ちが強いが、自分の気持ちだけで中途半端にしていても周りに迷惑をかけるだけだと思った」

この、言葉が僕の心に強く響いた。

追記:
気になった野茂の発言

「僕は、花があるうちにやめるんじゃなく、落ちぶれてボロボロになっても投げ続けようと決めました」(90年10月26日、ルーキーで新人王、MVPなど8冠に輝き)

過去に書いた野茂英雄に関するエントリー

野茂英雄
http://www.teratown.com/blog/archives/001749.html

野茂という生き方
http://www.teratown.com/blog/archives/001618.html

次の試合に勝つことだけ
http://www.teratown.com/blog/archives/001659.html

鮮やかではない人生

http://www.teratown.com/blog/archives/000923.html

http://www.teratown.com/blog/archives/001711.html

2 thoughts on “野茂英雄という美学

  1. 僕は、画面に映るカッコいい野茂選手しか知りません。
    元々、スポーツを観ることが少ない人間です。
    が、縁あって、野茂さんに講演をお願いすることになりました。
    そして、この記事を拝見させて頂きました。
    「気になった野茂の発言」に僕も感銘致しました。
    生き方もカッコいい、と思いました。
    突然のコメント失礼致します。有難うございます。

  2. コメントありがとうございます。

    私も野茂さんについて詳しくはないのですが、以前から野茂さんはかっこいいなと思っていました。
    マスコミなどが騒いでも全くブレないその進む道に憧れを抱いていました。

    野茂さんに講演をして頂くのですね。生の言葉で聞く野茂さんの話は映像を通してみるのよりも伝わってくるものがあるのではないかなと、うらやましいかぎりです。

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