日別アーカイブ: 2008/7/1 火曜日

感動をつくれますか? 久石譲

「努力して美しきものを生み出せる人々っていう」昔のエントリーでは久石さんのことを思って書いた。

久石さんの曲では菊二郎の夏の「summer」やあの夏、いちばん静かな海「Silent Love」キッズリターン「KIDS RETURN」や「MEET AGAIN」そしてAsian Dream Songなど最高に好きな曲がいくつもある。特にsummerなんかは最高だ。自分のプロフィールの好きな音楽にも「久石譲」と書いてあるぐらいだ。

他にも好きな曲はある。久石さんの作る曲は本当に素晴らしい曲ばかりだと思う。そんな風に常に継続して素晴らしい、美しい曲を作り続けている。

そんな久石さんを見ていると、努力して音楽を作り出しているような気がする。久石さんに会ったこともなければ、話したこともない。本も読んだことがない。ただ、少しテレビで見たことがあるだけ。久石さんのことを何でイメージしたと言えば、数回のテレビと様々な映画音楽やCM音楽を作っているという事実から。

特に、映画音楽などを作っているその数やクオリティなどを勝手に自分で解釈して、久石さん像を作り上げていた。そんな風に勝手に僕が想像した彼は、努力して美しいものを作り続けられる人。ビジネスの世界でもベストな音楽を作り続けられる人。すごい人だと思っていた。そんな久石さんは、どんなことを考えて、普段どんな行動を取っているのか知りたいと考えていた。

先日、本屋でうろついていた。時間がある週末は本屋をうろつく。これが欲しいと思って本屋に行く時もあれば、何となく行くこともある。本屋が好きだから、理由もなく行く。
だいたい毎日本は読むが、毎日本を買っている訳ではないので、たまに本を大量に買うことがある。先日も10冊ぐらいまとめて買った。これで、しばらく買いにいく時間がなくてもダイジョウブなのだ。

そう、そんな目的もなくふらっと行った本屋で、いろいろと本を眺めていた。すると、久石譲「感動をつくれますか?」という文字が目に入った。僕は即買いだった。タイトルで買う時もあれば、著者名で買うことも、本文を少し読んで買うこともあるが、今回は著者名「久石譲」をみてすぐに買うことを決めた。

この本を読んで、彼はビジネスの世界で美しい音楽を作り続けることを自分の領域として割り切っていると感じた。その姿勢を尊敬した。その前の30歳ぐらいまではミニマル・ミュージックという前衛音楽を突き詰めていいたらしい。自分が完璧だと思う芸術的としての音楽を追求していた。現在の方向性とは大きく異なる。僕としては、どちらの姿勢も覚悟の決まった途轍もないことだと感じる。自分の体の奥底から湧き出てくるものを表現することも本当にすごいと思うし、何らかのオーダーがあり期日があっても美しいものを作り上げる、これもまた本当にすごいと思う。意識的に美しいものをつくり続けられる人ってすごいと思う。

本自体は文章ごとにつながりがあまりなく、分断されている感じがするし、文章もあまりうまいとも思えない。さらに、もう少しこの内容について突っ込んだ考えを読みたいと思う箇所が多いのも事実。ただ、そんなことはどうでもいい。彼は文章書きではないのだし。ただ、取り上げていることやその考えは、僕にひとつひとつが突き刺さってくる。自分もそうしたいと思っているのに、目を覆っているような自分の価値観やこうしたいという気持ち。それがいくつもいくつも書かれている。そして、それらを久石さんは実行している。圧倒的にすごい。

自分の情けなさを気づかせてくれるし、取り上げられている考えや価値観、そして行動指針のようなものを自分なりに深く考えるきっかけをくれる。僕の考えている(憧れている)価値観のかなり多くに触れられている。自分の価値観や姿勢について、ちょっと横に置いてあったことを再び考えるきっかけをくれる一冊。

一部引用

仕事は”点”ではなく”線”だ。集中して物事を考え、創作する作業を、次へまた次へとコンスタントに続けられるかどうか。 ー中略ー 優れたプロとは、継続して自分の表現をしていける人のことである。

自分の曲の最初の聴衆は自分だ。だから、自分が興奮できないようなものではダメだ。 ー中略ー 最初にして最高の聴き手は、自分自身なのである。 

理論が肥大すると、実質は瘦せる。

どうやって音を節約するか、無駄な音を省くかをひたすら考えることになった。

譜面を書かなくなったことで、逆に感覚的なものが磨かれた。譜面を書くことが作曲家の仕事ではなくて、音楽をつくる一プロセスとして譜面があるというだけ。

理念には限界がないが、現実には限りがある。