日別アーカイブ: 2008/6/10 火曜日

響きにつられ、この島に行く(波照間島)その1

前回の旅日記はこちら

波照間島に行くため朝飛び起き、離島桟橋を目指した。
8時30分の船だったが、起きたのは8時05分。
なんとか間に合う。
そう思い、走った。
間に合った。8時30分には間に合った。
しかし、船の定員には間に合わなかった。
1時間以上前に満席になったという。

なんだそれ。そんなにも人が行くのか?
船の数が多くないのでこういうことになるらしい。

次の船は12時。ふー、だいぶ時間がある。
でも、また売り切れは勘弁だ。
そこで、12時のチケットは何時から発売するか聞くと、9時半という。
よし、ここで待とう。チケット売り場の前で寝ながら待った。

ちゃんとチケットは取れ、帰りの便も仮予約した。
それから2時間30分も待ち時間がある。石垣市街地でやることもなく、さらに眠たい。
うん、寝るしかない。でも、寝過ごすのは嫌なので、船着き場のすぐ横で寝ることにした。
ぽかぽかした陽気の中ぐっすりと眠りについた。

波照間島に行こうと思ったのは、その響きだった。
「果て」の島。
「果てのウル(珊瑚礁)の島」という意味らしい。
実際に有人島では日本最南端。

この「果て」という言葉が魅惑的だ。
人は、旅人は特にかもしれないが、この「果て」という言葉に引きつけられる。
そして、いつの間にかその場所に足跡を残す。

僕もユーラシア大陸最西端のロカ岬に行った。
果ての地とよばれるチベットやガラパゴスにも行った。
近いところでは本州最南端なども。
「果て」「端」こんなところには、つい足を踏み入れたくなってしまう。
この果てという言葉に、ついついつられてしまうのだ。

南の果てを目指すために、船に乗った。
眠たかったので、船内で寝ようとも思ったが、こんなにも天気がいいしデッキで風を感じようと思った。
僕は、だいたい船に乗るとデッキで風を感じて、潮のにおいを嗅ぎながら海を眺める。
なんとも言えないぐらい興奮する。腹の奥底から喜びが沸き上がる。
海のない県で生まれ育ったからかもしれないが、海にでると「海にきたーっ」とうれしくなる。
遠くまで来たんだ、海は世界とつながっている。そんな思いになる。

今回も発狂したくなるぐらい、興奮した。
海がきれいだ。風が僕の血をかき回す。
波のリズムで水しぶきがかかり、海とつながる。
そして、島が見える。あれが「パナリ島だ!」なんて感じ。

1時間ほどで波照間島に到着した。
港には宿の車がいくつも待っていて、旅人を宿へと乗せていった。
僕が予約していた宿の車もあるかなと思ったら、見あたらなかった。
個人的にはうれしかった。
島についてすぐ車になんか乗ってしまったら、島の第一印象が車の中になってしまう。
まずは、地図も何も広げずに島を歩きたかった。
自分の足と目と鼻と耳と肌で、この島を感じ取りたかった。
たいして大きな島でもないし、迷うこともないのだし。

宿を予約してあるにもかかわらず、荷物をかついだまま島のあちこちを、きょろきょろしながら歩いた。
サトウキビ畑に挟まれた砂利の一本道。
鮮やかな赤や黄色のハイビスカス。
石垣と平屋の沖縄の家。
そして青い空。
もう、言うことはなかった。
僕の待ち望んだ「島」がここにはあった。
ホッとできた。

歩いていると、泊まる宿が見えた。
壁に大きく「ヤドカリ」と書いてあったのだ。
今日泊まる素泊まりの宿。

宿はおばぁ一人でやっていた。
部屋と言うか、10畳ほどのプレハブだった。
ここに、6人ぐらいで寝るらしい。
まあ、僕はどこでも寝られるので特に問題ない。

昨日から泊まっている人がプレハブの中にいた。
二言三言はなして、僕は海にいくことにした。
きらめく海に。

着替えて、シュノーケリングするために調達したコンタクトレンズを持ち出かけた。
ニシ浜をめざしてしばらく歩いていると、遠くに青く透明な海が見えた。
深さによって色が違うが、どこを見ても澄んだ青い海だ。
最初は、嘘じゃないかと思った。
こんなにも美しい海が現実にあっていいものなのか?

僕は旅をよくしてきたけど、こんなにも美しい海には来たことがなかった。
タイのタオ島やエクアドルのガラパゴスの海でも潜ったが、こんな色ではなかった。
美しい海はモロッコから望む大西洋が美しかったが、その比ではなかった。
テレビや写真で見る鮮やかで澄み切った青い海は、合成技術によってできた産物だと思っていた。

そんな海が目の前に飛び込んできた。
もう、たまらない。ワクワクして、心が躍る。
気分も高揚し、跳ねるように浜へいった。

近づいてみても、やはり美しい。
本物だ。当たり前だが、そんなふうに思った。
もう、うれしくてうれしくて。
やっぱり、こういった自然と向かい合った時、一番興奮する。
天からの恵みに本当に感謝する。


波照間のニシ浜はあまりにも美しい海だった。

コンタクトをつけて、シュノーケルをつけて海に飛び込んだ。
海の中も澄み切っている。やっほい。
何もかもから解き放たれたように、海の中を満喫した。
サンゴに熱帯魚。海に仰向けに浮かべば青い空。
波の打ち寄せる音。

海からいったん出て、海を眺めた。
どれだけ見ていても飽きることのない海。
これこそが揺るぎのない絶対的な美しさだと思った。
小林秀雄が「解釈を拒絶して動じないものだけが美しい」と本に書いていたが、まさにこのことだと思った。


旅の続き

響きにつられ、この島に行く(波照間島)その2


沖縄(八重山/波照間島)旅の写真はコチラ

http://teratown.com/OKINAWA2008.html