日別アーカイブ: 2012/10/28 日曜日

【Amazing Summer 2012】美しき山々を前に、もう何も語ることはない。

【Amazing Summer 2012】霧の中から青空のアルプスへ

始発の電車に乗って、ユングフラウヨッホを目指す。夜中に空を見上げると満天の星空だったので、期待してテントを開ける。良しキタ。青空があと数時間もすれば世界を包む。そんな、世界を想像させる朝だった。空気はひんやりしていて、テントも朝露がついていた。パンの朝食を食べ、テントはそのままにして、日干しすることにした。また、ここに戻ってきて、テントを片付けて、クライネシャデックへ宿を移そうと決めた。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

静かな町を通り抜け、駅へと向かう。オレンジ色に空が染められ、山の頂きが昇ってきた太陽の光を一番に受け止める。そして、山の頂までハッキリと見えることに喜びを感じ、ユングフラウヨッホでも素晴らしい光景が待っているに違いないと確信した。山岳鉄道はのしりのしりと高度を上げて行く。車窓から眺めると、みるみるうちに山が迫ってくる。そして、さっきまでいたグリンデルワルトの町を見おろす。太陽も完全に昇り、青い空が広がった。席の向かいに座っていた、おっちゃんとも最高の天気ですねと話し、お互い自然と笑みがこぼれる。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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クライネシャイデックに到着。ここで電車を乗り換えて、ユングフラウヨッホを目指す。ここからはさらに高度をグングン上げる。アイガーの山の中にトンネルが造られ、鉄道はそこを通る。あのアイガーの腹の中にいるというのが、どこか不思議な感覚だ。基本的にトンネルの中なので、観光客が飽きないようにディスプレイが設置され動画が流れている。それは、アイガーだか、ユングフラウだか、どこの山か忘れたが、頂上へのタイムアタックの動画。これが迫力満点。というか、スゴすぎる。基本雪山なんだけど、1人で確保とか全くせず、両手にアイスアックスを持って、全く休むことなく登り続けてる。何かあったら、滑って落ちて死ぬなって感じがするほど。それにしても、よくもあの高度で、あの雪で、あのスピードで登り続けられるなーと。

席の向かいは日本人の親子が座っており、話しかけられた。こんなヨーロッパの物価が高い場所にくるには、男1人だし、仕事にも見えないし、旅行っぽくもないし、ザックには日本の国旗のワッペン着いてるし、何ものか分からなかったから、とりあえず声をかけられた感じだと思う。UTMBとモンブラン登山に来たと話すと、100マイルも走る競技があるなんて、と驚いていた様子。そして、列車は眺めのよい展望台で2度ほど止まった。その都度、列車から降りて、真横に見えるアイガーの壁を仰ぎ見た。真横というか目の前と言うかは非常に難しいけれど。

ユングフラウヨッホに到着すると、3454mの世界。一面まっ白な銀世界。シャモニーのミディにしろ、マッターホルンのグレーッシャーパラダイスにしろ、よくもこんな高い所まで鉄道やロープウェイを作るもんだなと、驚く。便利さと、驚きとともに、少しの違和感も感じずにはいられない。始発の列車で到着したので、どこかにジョリーさんがいるはずと思い、見回すと発見。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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さっそく二人で、雪の中へと飛び出し、メンヒスヨッホヒュッテをめざす。真っ青な空に太陽ひとつ。まっ白な雪の大地を照らし出す。その反射で雪目になるのではと思うほど。メンヒスヨッホヒュッテまでは2,3キロの雪の道なのだが、しっかり圧接されていて道幅も広いのでトレランシューズでも問題無し。始発か一番に外へと飛び出したので、誰もいない高度3500メートルの雪の世界をはしゃいで楽しんだ。周りを見渡せば、メンヒ、ユングフラウがあり、遠くまで氷河が広がる。青い空に、クラゲのような雲が浮かぶ。たまらない。もう、たまんねー。こんなにも、天気に恵まれるなんて、本当に最高だ。幸せだ。

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あまりにも、うれしくて、興奮して、大声で叫んだり、気持を爆発させて飛び跳ねるように自然を味わった。ジョリーさんが先に行き、おれは写真を撮りながら、雪の上で寝転がったり。すると、風が吹いて粉雪が舞った。そんな中を歩く姿がとっても絵になるので写真をパシャリパシャリ。メンヒスヨッホヒュッテに到着すると、寒い。立ち止ると寒さに気づく。綺麗っぽそうな雪を掘って食べてみたり、この世界を満喫していたら、あっという間に時間がたってしまっていた。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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帰りもこの世界は少し違った風景を見せてくれる。メンヒ登山をするパーティーが何組かいた。この天気での登山は最高だろう。頂上から見る世界はたまらんだろうな、と思いながら山に挑むアルピニストを見ていた。真っ赤なヘリコプターが雪原に降り立って、目を奪われたりしながら、建物に戻った。それから、氷で360度囲まれた不思議な展示を見る。アイススケートみたいに滑って、子どもみたいに遊び、外の展望台へ。ここからはユングフラウが目の前に。そして、アレッチ氷河も。もう、何も語ることはない。ただただ、息をのむほどの風景。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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ユングフラウヨッホを後に、アイガーグレッチャーへ降りる。ここで降りて、アイガートレイルを走ってクライネシャデックまで走るのだ。想像するだけで、気持いいトレイル。ジョリーさんと、やべー、たまんない、最高!と話しながら、走って行った。あまりにも綺麗過ぎて、夢の世界のよう。そして、日本の景色の悪いレースなんか出てらんないと話した。UTMBも走るんじゃなくて、こんな風に自分のペースで楽しみくなるほど。もう、それぐらい気もち良いトレイルランニングだった。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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見上げれば青い空、後ろには名峰がそびえ立ち、眼下には鮮やかな緑の芝生。そんな世界に赤い山岳鉄道が登ってくる。にくいね。この列車の色がにくい。マウンテンバイクでアイガートレイルを走り抜ける人たちがいたり、エメラルドグリーンの池でのんびりする家族がいたり、いろんな形でこの恵まれた日を楽しんでいた。ジョリーさんに噂のドミトリーを教えてもらい、その絶景のロケーzションにびっくりした。今までの人生で一番のドミトリーだ。いや、ホテルを含めても人生でこれ以上のロケーションの場所に泊まったことはない。だって、部屋の窓からはアイガーが見えるのだから。今日の夜に泊まれるかを確認して、グリンデルワルトへ戻ってテントを片付けることに。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012ver2
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グリンデルワルトのキャンプ場に戻ると、テントは既に乾いており、ささっと片付けてザックに詰め込んだ。天気がいいとありがたい。最高の恵みだ。パラグライダーが青空を舞っていた。あの視点から見る世界もたまらなく爽快なんだろうと、想像した。そして、ふたたびクライネシャデックまで山岳鉄道で登っていく。部屋に荷物を置いて、1秒でも早く外に出たかった。この美しい世界を少しでも長く堪能したい。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012ver2
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宿はクライネシャデックで一番高いところにあり、裏のトレイルから続くメインリッヘンという山へ行くことにした。ここからは、真正面にアイガー、メンヒ、ユングフラウが望めるのだ。トレイルを走ったり、歩いたり。後ろを振り向くと三山がそびえ立っている。ぱらぱらと人に会うが、基本的に山から帰ってくる人のみ。夜の9時ぐらいまでは明るいのだが、鉄道は5時ぐらいで終わる。だから、早く帰らねばならないのだ。クライネシャデックに泊まっているほんの一握りの人だけが味わえる時間がこれから始まる。といっても、その一握りの人も遅い時間に何か出かけないので、この世界を独り占めなのだ。もう、もう、それだけで飛び跳ねて叫びだしたくなる。

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人はいないが牛はいる。こんな標高の高い所にも。心肺機能が強い牛なのかなーと、疑問を抱きつつメインリッヘンへと。思っていたよりも長く、最後の登りはいい刺激になった。メインリッヘンの頂上からはアイガー、メンヒ、ユングフラウはもちろん、いくつもの湖やグリンデルワルトの町など、どこまでも見渡せた。あまりにも気持よくて、大地に寝転がった。この美しい世界と繋がった感じがした。音楽を聴いたり、鼻歌を歌ったり、片足でバランスをとりながら石の上を飛び跳ねたり。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012ver2
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誰もいないしヘッドライトもあるし、夕暮れまでいようかと思ったが、8時までに夕食を食べないと行けないので帰ることに。ドミトリーは本当はレストランで、8時までしか営業していないのだ。2日間はテント生活だったので、今日はおもいっきり肉でも食おうと思い豪華な食事にした。肉も野菜も最高にうまい。レストランからも山々が見え、だんだんとオレンジに染まっていく。食べるのもそっちのけで外に出て、夕陽に照らされアイガーオレンジ色に染められた姿を見た。メンヒ、ユングフラウの雪もオレンジ色に。今、この瞬間の現実として、この世界を見ているはずなのに、どこか思い出の中にいるような、夢の中にいるような不思議な感覚になっていた。鳥の羽のような、羽衣のような雲もまた、やさしく美しかった。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012ver2
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食事に戻り、食べ終わると、月が昇ってきた。メンヒの肩から昇ってきた。こんなムーンライズを見ることができるのはここ以外ではありえない。真珠のような月がメンヒを照らし、沈みゆく太陽はアイガーの北壁のみをピンク色にした。様々な人を飲み込んだアイガー北壁。そこだけを最後に照らして太陽は沈んでいった。月が徐々に高度を上げていくと気温はグッと下がっていった。グリンデルワルトの町灯りが見えはじめ、月明かりもよりいっそう明るさを増した。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012ver2
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部屋に戻ってシャワーを浴び、歯を磨いて寝ることにした。すると、電車をなくしたジョリーさんが走って戻ってきた。ジョリーさんはかなり足が速いからいいけど、常人には無理だな。そして、宿の飯もないのでちょっとかわいそうだった。そして、すぐに眠りについた。

真夜中の1時過ぎに僕はこそこそと起きて、ダウンを着込んで外に出た。満天の星空に天の川。ヨッシャ。あの天気だったら最高の星空が見えるだろうと思っていたのだ。もちろん、誰もいない。首をぐるっと回して、空を見回してみても、どこまでも星空が広がっている。アイガー、メンヒ、ユングフラウ、そして満天の星空。こんな素晴らしい世界はあるのかと思った。もう、何も語ることはない。

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