日別アーカイブ: 2012/10/26 金曜日

【Amazing Summer 2012】霧の中から青空のアルプスへ

【Amazing Summer 2012】モンブランから一夜明け、安らぎの一日を

あまり乗り気ではなかった。夜中にテントを叩く雨音がしていたからだ。薄らと空が白んできた頃に目を覚まし、シュラフに足を突っ込んだままテントのジッパーを開ける。テントの明らかに天気が悪い。小雨と濃い霧。うーん、少し冷え込んだ朝は、シュラフから出るのをためらう。ツェルマットよりも標高は低いはずなのに、明からにグリンデルワルトの方が冷え込んでいる。このまま、テントの中でもじもじしていても、暇なのでパンをかじったら外に出ることにした。

町の中心から出る始発のバスの時刻は調べてあった。それにあわせてキャンプ場を後にする。夜明けのグリンデルワルトの町は本当に静かで、ヒンヤリとしていた。バスターミナルまで到着し、時刻を確認する。もうすぐ出発なのに、運転手の気配が全くない。乗客が少ないし、バスがないのか、古い時刻表なのかとも考えたが、ここはスイス。今まで旅してきた国とは違うはずだと思い、小雨を避けるように軒先で待っていた。すると、出発の1分前ぐらいに運転手が着て、バスは発車した。乗客は3人。静かなバスは町中を抜けて、山へと入って行く。こんなにも細い道を通るのかというぐらい、細い道を。天気は回復しないまま、すごい霧と小雨が続いていた。バスには数十分ぐらい乗る予定だったので、その間に天気が変わってくれないかと淡い期待を寄せながら。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

しかし、到着したグロッセシシャイデックも濃い霧のままだった。バスから降りるとバスはすぐに出発した。周りを見渡しても雨宿りするような場所もないし、町へ帰る手段もない。ちいさな物置小屋の軒先で雨宿りをしたが、大雨でもないし、歩いて行くことにした。人は誰もいない。まあ、こんな日に歩いても何も楽しくないからな。視界は数メートルほど、そんなトレイルを小走りで進む。牧場も多く、牛が草をむさぼっている。もちろんトレイルには、牛の大きな有機物がそこらじゅうに。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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雨が降ってきそうな感じもしたので、フィルストまで早く到着してしまおうと思っていた。フィルストにはロープウェイがあるので、そこまで行けば雨にたいして濡れず町まで帰れるからだ。フィルストに着いたのが早く、まだ昼にもなっていない。このまますぐに町へ戻ったら、この日は何もしないだろうから、フィルストの売店やレストランで暇つぶしをして待つことにした。やることもないので、外を眺めながら、ミックスナッツを食べながら。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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どれぐらい待っただろうか、他の観光客もロープウェイで到着してしばらく待ち、そして帰って行った。そんな人たちを何サイクルか見た。西の空に晴れ間が見え始め、雲間から山が覗けた。これは好転するかもしれない。しかし、また雲で覆われた。しばらくすると、また青空と山が一部だけ顔を出した。そんなことを何度か繰り返していると、このまま晴れるのではないかという気がしてきたので、バッハアルプゼーという湖に向けて歩いて行くことにした。この湖はマッターホルンであった写真家のおっちゃんが、一番好きと言っていた場所。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

雲が流れて行く。風が吹くように雲が流れて行く。空を眺めながらあるいていると、見る見るうちに白い空が青い空へと変わっていった。そして、湖に到着する頃には、青く澄み切った空が広がっていた。森林限界を超えているのか、ただの牧草地帯なのか分からなかったが、緑の絨毯が広がり、煌めく湖、そして青い空と白い雲。雲をあっという間に吹き飛ばすぐらいなので、風は強かったが、とても爽快な風景の中に自分がいた。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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そして高度を上げて、ファウルホルンの頂上に。ここからは眼下にエメラルドグリーンに輝くブリエンツ湖が見えた。とても綺麗だけれど、ちょっと違和感を感じるぐらいの色をしていた。地元スイスのおっちゃんと話しながら、360度のパノラマを楽しんだ。さて、ここからは下り、アイガー、メンヒ、ユングフラウなどを目の前に見ながらブスアルプまで歩いて行く。空を見渡せばほぼ青空なんだけれど、アイガーなど高峰の周りにだけ白い雲。ハッキリと頂を見ることが出来ない。悔しい。まだまだ時間はあるので、山の中でなんども寝転がりながら山々を眺め、雲が晴れるのを待った。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012

それにしても、気持のよい時間だった。この大きな自然に包まれながら、音楽を聴いたり、鼻歌を歌いながら名峰の頂が現れるのを待つ。少し歩いては、大きな石を見つけて座り、いい斜度の芝生を見つけては寝転がり、そんなことを繰り返した。あっという間に時間は過ぎて行ったけれど、頂がハッキリ見えることはなかった。とても残念な気持を抱きつつ、牛とにらめっこをして遊びつつ、ブスアルプまで下り、バスでグリンデルワルトの町まで下った。テントに戻る前に、スーパーで夕食を買おうと思って道を歩いていたら、ビックリした。友達のジョリーさんにばったり会ったのだ。UTMBに出る友達が、早く着いたのでスイスに遊びに来ていたらしい。こんな所で偶然会うとはビックリした。どんなコースを走ってきて、どこの景色が良かったという話しや、ジョリーさんが泊まっているクライネシャデックのドミトリーが安くて、景色が抜群で良いと言う話しを聞いた。明日は、そのドミトリーに移動しようと決めた。そして、明日の朝の始発でユングフラウヨッホに行き、そこで会えたら会おうと約束して別れた。

送信者 モンブラン登山とUTMB2012ver2
送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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送信者 モンブラン登山とUTMB2012
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昨日と同じように、スーパーで夕食を買いテントの横に腰掛けながら山を眺めながら食べた。たいしたものを食べていないのに、なんだか気持よくおいしく感じた。UTMBを前に1人でいるのも最後の日と言うことで、UTMBへの思いを書き残して、ブログにアップして寝ることにした。少し肌寒く、夜中に起きた。テントのジッパーを開けて空を見上げると、そこには無数の星が瞬いていた。静かで、キリッとした空気の中に無数の星が輝く姿は、心をワクワクさせた。明日は晴れる。最高の山に出会えるだろうと確信して、再び眠りについた。明日は始発でユングフラウヨッホへ行く。