母親にとって命をかけた最大の記念日

しばらく前に、友達3人で阿佐ヶ谷のおでんやに入った。
初めて入ったカウンターだけの店で、おばあさんが1人で切り盛りしていた。

他の店で飲んだ後に立ち寄ったので、ビールだけ1杯飲んで帰ろうと話していた。
3人とも阿佐ヶ谷に住んでいて、かつ土曜日だったので夜も遅かったと思う。
瓶ビールを飲みながら、おばあさんにオススメのおでん盛り合わせを出してもらった。

おでんが美味しく、落ち着く空間だったので、これからも食べにきたいと話すと、おばあさんは20年以上も店を1人で切り盛りして来たが、そろそろ止めようと思うと話した。

初めて入った店で、店を閉めるという話しを聞くのは寂しい感じがしたが、おばあさんはゆっくりとした口調で、若造3人に今までの自分の人生を語るかのように話してくれた。

「人生には3つの坂があるのよ、
 知ってる?

 ひとつ目は、
 上り坂

 ふたつ目は、
 下り坂

 みっつ目は、
 まさか

 まさかが一番大きな坂なのよ。」

「ほら、あんた、好きな言葉は?」

好きな言葉はたくさんあるけれど、
無意識のうちに「一期一会」と答えていた。

「じゃあ、何を信じるの?
 ああ、誰を信じるかでもいいは?」

僕は「明日を信じる。」と答えていた。

他のお客さんも順に同じ質問に答えていった。
その中に、今日がお子さんの誕生日の方がいらした。
子どもとは言っても、もうとっくに成人し結婚しているお子さんだった。

店のおばあさんは、またゆっくりと話した。

「それはおめでたいはね。

 子供の誕生日ってのは、自分が命をかけた大切な記念日なんだよ。

 あんたたち、分かる?

 誕生日は自分が生まれた記念日だけじゃないのよ。

 母親にとっては、自分の命をかけた人生でとっても大切な日なの。

 あんた、自分の誕生日は自分のものだけだと、思ってるでしょ。

 母親にとっては、1年でもっとも思い出深い日なのよ。」

今まで、自分では全く思いもつかなかったことだった。
でも、言われてすごく納得した。
けっこう衝撃が走るぐらい、心にグサッと来た。

本当に自分視点でしか物事を考えれてないなと、情けなくなった。
けれど、母親にとっては子どもの誕生日が「命をかけた大切な記念日」なのだ、ということに気づけたことがうれしかった。

いつの間にか時間は経ち、周りの他の店は全て閉まっていた。
遅くまで、すいませんでしたと話すと、

「あら、大丈夫よ。

 息子が迎えにきてくれるのよ。」

と言って、おばあさんは電話を取り出した。

送信者 パプアニューギニア2011

2011/11/11 たぶん生きている中で一番「1」が多く並ぶ日。
1日遅れたけれど、誕生日、そして大切な記念日おめでとう。

お産という冒険
http://www.teratown.com/blog/2008/06/23/eea/

涙で始まる朝
http://teratown.com/blog/2010/09/04/ithcithea/

2 thoughts on “母親にとって命をかけた最大の記念日

  1. teratownさん、こんばんは。

    いい話だねえ。
    母親と子どもの絆の深さがよくわかるよね。
    親父の存在が薄らいじゃうなあ。

  2. momomoさん

    母と子どもの絆は深いんですね。
    大人になってから少しずつ分かりはじめました。

    こういう時は父親が出て来ないのが残念ですが、父があっての子どもですよね。

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