月の奥に鏡を見る

月を見て、
旅を想う

月を見て、
人を想う

中国の誰もいない砂漠で、出会った旅人と二人。
彼は世界一周を中国から始めたばかりだった。
見渡す限り人気のない砂漠で、夕日を眺めた。
砂で霞む空に、陽は沈んでいった。
すると、グッと冷え込んだ。
寝転んでいると、輝く月が砂漠を照らした。

ボリビアの、ラグーナベルデ。
緑の湖。
標高も高くマイナス20度ほどだった。
真正面に広がる緑の湖がピンクに変わり、
その奥の地平線から輝く真ん丸の月が登って来た。

チリの砂漠。
2,3日車で移動し続けていた。
まぶしいなと想ったら、黄金の月が登って来た。

テヘランの小さな工場街。
油臭い路地でイラン人のおっちゃんと出会った。
彼は昔、日本で働いていた時のことを話してくれた。
今も忘れられない人がいると。
ぼろぼろになった、連絡先の紙切れを見せてくれた。
その帰り道、ほっそりとした二日月が輝いていた。

憧れのアラスカにいた。
北極圏に入りさらに北へ向かった。
森林限界を越え、アティグンパスという谷まで来た。
淡いピンク色に染まる空に、真ん丸の月があった。
ブルームーンだった。
それは、1ヶ月に2度の満月があること。
背筋がゾクッと震えた。

チベットへはヒッチハイクで入った。
大きな大きなトラックだった。
タンゲ峠という一番高い峠の手前で、
どうしてもトイレに行きたくなった。
でも、トラックの運転手は止まれないと言う。
今止まると、トラックが下がって行ってしまう。
峠を越えるまで待てと。
峠に到着して、ひとりダッシュで降りる。
真夜中に尻がしびれるほどの寒さでノグソ。
ホッとして空を見上げると、月と星が瞬いていた。

徹夜で初めて山を走っていた。
ただ我武者らで、一歩。
そして、また一歩前に進んでいた。
明け方近く、ひらけた場所に出た。
まぶしいぐらいに月が輝いていた。
夜中じゅうも照らしてくれていた。

西表で夜釣りをしていた。
船にぷかぷか揺られながら。
隣の島からはかすかに音楽が聞こえていた。
水面に月の灯りが波打った。

芸大の授業の後、
いつも上野公園の砂場で飲んでいた。
薄暗い中、語りながら、はしゃぎながら飲んだ。
砂場で相撲を取ったりもした。
街灯だけじゃなく、月が温かく照らしてくれていた。

瀬戸内海の無人島で過ごした、
思い出すと大変だった日々も、
東京から岐阜を目指して歩いた、
そんな大変だった毎日も、
月は照らし続けてくれた。

岐阜で過ごしていた小さい頃、
いつからか、カーテンを開けて寝るようになった。
ベッドに寝転がる。
すると、寝ながら月と目が合った。
満月の夜が多かった気がする。

同じ時に同じこの月を、誰が見ているのだろうか。

今見ている月は旅先で見て心が震えた月と同じ月なんだろうか。

月は反射して輝いている。
それは鏡。
何かを写し出すもの。

月が鏡だから想う。

月と言う鏡を通して、
人を見る。
過去の旅を見る。

人は、輝く月を見て、自然と何かを想う。
それは、月が光を反射する鏡の役割だからだろう。
でも、そんな原理を意識しなくても、人間は月を見て何かを想う。
不思議だ。

太陽を見てもそんな風に想う人はほとんどいない。
太陽は鏡のように反射して輝いてないから。

人間の感は不思議なぐらい、鋭く、豊かである。
無意識に、どこからかそんな原理の本質まで感じとっているのだから。

===
上の文章は、この前振りなんですが、
6月16日の明け方に皆既月食が見られる。
低い位置で皆既になり、月は欠けたままの状態で沈んでいくようだ。
西南西の空を見ようと想う。

送信者 四国

月の奥に鏡を見る」への4件のフィードバック

  1. 旅人には月が似合いますね!!

    一人で歩いているとき良く月を見あげることがあります。

    その時は月を自分の姿に投影しているのでしょうね。

  2. teratownさん、こんばんは。

    へえー、皆既月食があるんだ。
    晴れるか問題だけど、明け方の撮影はmira47さんにお任せ。

    月ってlunaともいうようだけど、
    月を眺めながらあまりに感覚を研ぎ澄ませすぎるとlunatic?
    オオカミ男は満月。
    月ってけっこう怖いところもあるよね。

  3. maedaさん

    確かに、旅が好きな人は月が好きな気がします。
    特に一人旅をする人は、よく言えば詩人、悪く言えばひとりで悦にひたるタイプが多い気がしますので。
    自分を含め。

    自分ひとりで月を見ている時は、自分を見ている感じがしますね。
    ゆっくりとした邪魔されない時間を月を見ながら、育んでいる気がします。

  4. momomo さん

    朝早いんですよね。
    それが、なかなかネックです。

    月の模様も国によってはいろいろな見え方があるみたいですね。
    ロマンチックな物も、神話的な物も、怖い物も。
    いろいろな文化が面白いです。

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