日別アーカイブ: 2009/11/29 日曜日

辛くもあり幸せな表現の旅を終えて

正直なところ、終わってホッとした。何とかここまでたどり着いた、そう思った。

クリエイティブライティングの講座が始まって半年間はなかなか大変だった。書くことがこんなにもしんどい行為だと初めて知った。今まで文章を書くときは自分の思いついたことを、好きなように書いているだけであった。しかし、今回はテーマを与えられ、期日までに提出する必要がある。さらに、その書いた文章を受講生の前で朗読し、coyote編集長の新井さんからアドバイスを受ける。自分の書いた文章をその場で発表し、講評を受けるというのは最も刺激的な場であった。もちろん、テーマも一筋縄ではいかないような課題が出されつづけた。

思うように書けない。書くテーマをいろいろと考えてもこれだというものがなく、ああでもない、こうでもないと考え続ける。するとすぐに締め切りはやってきてしまう。電車の中でも走りながらも何を書くかを考えていた。締め切りがやってくると、どうしても書かなければいけないので、候補の中から最も良いと思われるもので書き始めた。2回ほど締め切りを守れなかったこともある。自分の書いた文章を朗読するので、書き終えてから声を出して読み返すことをした。しかし、本番となると上手く朗読できない。

こんな感じで、納得のいく文章は書けなかった。特に今回のクリエイティブライティングで、自分の中で納得がいっていないコトが5点ほどある。

文章表現、構成、展開、場面設定などのテクニックがないのは周知の事実だが、ないなりに推敲が足りないと毎回感じた。時間にゆとりを持てずに、中途半端なまま提出することばかりだった。もっと、もっと何度も推敲した上で、考えて練った上で文章を公にできればと思う。そして、読み返すだけではなく、口に出して何度も読み上げるといいと思った。

自分の内面を逃げずに何処まで掘り下げれるのか。その掘り下げ度合いが浅くて、内容的に深みのない文章になることがあった。自分にもっと批判的なもうひとりの自分を設定して、徹底的に中に入り込んで行きたい。

書き方のパターンがいつも似た感じになってしまう。始まり方、終わり方がいつも同じで、メインの展開も似ている。様々な本を読んで、今までに書いたことがないパターンにも挑戦していきたい。

文章が全体的に硬い。文章が硬くて肩が凝りそうになる。もっと柔らかく、しかし崩れていないような文章を書きたい。そうすると読み手や聴き手にすんなりと入ってくると思う。

最後に、自分が思っていることを、うまく伝えることが出来ていないと感じた。自分が伝えたいことを出来るだけ読み手や聴き手に的確に伝える。どうしても伝えたいことを明確にして、それを伝えるにはどうするのが一番良い方法なのかを考えつづけて表現したい。

ということで、いつも不完全燃焼だった。自分というものが何も伝わっていないなと感じていた。それは、僕が自分自身を文章で表現出来ていないのが理由だった。

最終講義では自画像をテーマにした文章で、走ることを書いた。最後も自分の言いたいことは表現できなかった。ただ、自分の書いた原稿を朗読し終えてから、新井さんにいくつか質問された。「なぜ、走るのか?」そんな質問に答えている時に、自分の思っていることを少しばかり話せた気がした。

僕が答え終わると、新井さんは「書くという表現じゃなくて、走ると言う行為がお前の表現なんだな」と言われて、自分の一方的な思い込みではなくて良かったと感じた。自分が考えていること、自分でも自分を最も表現できていると思っていることで、新井さんは僕を理解してくれた気がした。そしたら、もやもやしたものがスッと晴れ渡った。納得のいっていない文章を読まなければならないので、最後の講義も行くのが嫌だなーと思ったけど、最後までこの旅をつづけて、半年間自分を見つめつづけて良かったなと思える日だった。やっぱり逃げちゃならない。

クリエイティブライティングはとても暖かい場所だった。そんな場所で様々なアドバイスをいただいたので、そのアドバイスを宝物として、今後の表現に活かして行きたい。ただ、12月19日にまだ「For get me not」という持ち時間5分で自由に発表する場があるのと、池澤夏樹さんの会が補講である。まだ、この表現の旅は続いて行く。

最後に、卒業にあたり新井さんからメッセージを頂いた。

「旅を遊びととらえる君の位相が
 とても魅力的に映る。
 さらなる自由を。

      クリエイティブライティング2009 卒業 
                    新井敏記」

送信者 ドロップ ボックス

課題
 選考課題       自分への弔辞」

 オリエン 6月6日(土) 「たったひとつの思い出を語る」「1冊の本を語る」

 第1回  6月27日(土) 「 日々を見つめる。6月6日から15日まで、受講以後のあなたの新世界の十日間」

 第2回  7月25日(土)  「インタビューの実践―相手の心を開いて言葉を聴く」

 第3回  9月26日(土)  『紀行文』

 第4回 10月31日(土)  『紀行文』

 第5回 11月28日(土)  「自画像」

講師
 オリエン 6月6日(土)  新井敏記 オリエンテーション

 第1回  6月27日(土)  特別講師:是枝裕和(映画監督)「思い出の表現」

 第2回  7月25日(土)  特別講師:柴田元幸(翻訳家)「相手を理解すること、翻訳とエッセイ」

 第3回  9月26日(土)  特別講師:若木信吾(写真家・映画監督)/スミン

 第4回 10月31日(土)  特別講師:藤原新也(作家・写真家)「写真と文章、旅の表現」

 第5回 11月28日(土)  新井敏記「表現のまとめ」