知らず、知らずのうちにシラーズ到着

全開の旅日記はこちら「旅先三日目に、旅は始まる」

寝て起きたら、シラーズに到着していた。イランのバスではパンとお菓子が配られるが、それに一口も手をつけず、眠り続けていたのだ。シラーズは寒いと聞いていたが、それほどでもなかった。しかし、エスファハンとは違い、あたりを見回すとすぐ近くに赤茶けた山々が近くに見えた。標高も少し高くなり、かなり乾燥しているようだった。久しぶりの海外での夜行移動だったが、比較的新しいバスでそれほど疲れはたまっていなかったが、バスターミナルで一休みすることにした。チャイとシュークリームを食べる。シュークリームはうまいのだが、外国で良く味わう安っぽい甘さの生クリームで、ひとつで十分だった。

バスターミナルを出ると、道を車に乗っていた兄ちゃんに聞いた。すると、乗せていってくれると言うので、車に乗り込んだ。バックパックを抱えていたが、トランクに入れていいよと言うので、トランクにいれ出発。目的地と逆方向に進みはじめたので、確認すると町中は混んでいるので迂回するというようなニュアンスの説明をされた。そうか、と思い外の景色を眺めているとお菓子をくれた。イランにしては甘さ控えめのクッキーのようなものだった。

幹線道路になり、両脇は荒野になった。ドライブ気分で楽しかった。2、30分ほどすると、幹線道路沿いで車を止め、向こうに見える町がシラーズだと言う。少しばかりおかしいなと思ったが、そのまま降りた。トランクを開けようとした瞬間に車が急発進した。何だか分からなかった。友だち同士でやるいたずらをされたのかと思ったが、あっ、やられた。と気がついた。猛ダッシュで追いかけて2、3分走ったが車に追いつくはずはない。。。車が走りはじめ、前のめりになり右手を伸ばしているシーンは鮮明に目に焼き付いた。

ああ、どうしよう。やってしまった。海外で初めてモノを盗られた。それもバックパック丸ごと。持っているものは、お金とパスポートとカメラ2台だけ。落ち込んでもしかたない。パスポートなどが本当にあるかを確認し、その場で記念撮影もした。太陽が照りつける幹線道路沿いの荒野をとぼとぼと歩き続けた。盗まれた荷物が道に捨てられていないだろうかと、探しながら。しかし、あるはずがない。残り10日以上の旅で盗まれた事によって何か問題が起こるかもしれないと思い、盗まれたものを思い出していた。カメラのレンズ、カメラのフィルター、カメラの充電器、写真データの入ったSDカード、洋服一式、ダウンジャケット、洗面用具、日記、ヘッドライトなどなど。致命的なものはなかった。カメラを常に方からかけていて救われた。彼らにとって価値のあるものは特になり。しいて言えば、闇市で売れると言う視点では、バックパックやヘッドライト、ダウンジャケットあたりだろう。そう言ったものも愛着があり、非常に惜しいが、それよりも写真や日記を盗まれた事が悔しかった。金で買えないものにこそ価値を感じているのだなぁとしみじみ感じた。取り返しのつかない、代替のきかないもの。今回のこの旅でしか撮れなかった写真や日記だ。モノというものは、あるべき人のところにあってこそ価値があるのだなと痛切に感じた。

2、3時間荒野を歩いた。照りつける強い日射しを浴びながら。そろそろ町中に行こうと思い、道路を渡りしばらく歩いて町中に。でも、ここがどこか分からない。とりあえず、のども乾いたし、原も経たので見つけた売店に。場所を聞いてもイマイチ分からなかったので、前の道路を走るバスをつかまえた。市街地の有名なスクエアの名前を言うと、このバスはそこまで行くということなので、バスに乗る事にした。普段なら席があいても立っているのだが、どっと疲れが出て、席に座って呆然と外を眺めた。

町中につき宿に入った。宿に置く荷物もないが、ベッドに倒れ込みたかった。ホッとした。休憩してから飯を食いにいった。昼は元気を付けようと、ラムケバブを食べた。チキンケバブよりもラムケバブの方が安いし、うまい。警察を探し、町を歩いた。交通整理をしている警官に、身振りで盗まれた事を伝え警察署の人に来てもらい、警察署まで行った。警察署には逮捕された人もいて、あまり居心地のいいものではなかった。逮捕された人は警察に言い寄られたりしていた。早くここから出たい。しかし、調書をもらわないと旅行保険がおりない。みんな英語が話せないので、英語が話せる人に電話して、その人に俺が説明した。しかし、担当者も決まっていないようで、色々な人に同じ質問を繰り返しされるだけだった。なんだよこれ。さらに、外人が珍しいらしく、関係のない故おばかり聞いてきたりと。2、3時間いたが結局調書はもらえなかった、夕方来いと言われただけ。

保険会社に電話しようと思い、町行く人に聞いた。親切に教えてくれて電話屋さんまで連れて行ってくれた。親切なのだが、盗難の事件にあったばかりだと神経質になる。周りが俺を狙っているんじゃないかとか、怖い気持ちもあった。さらに盗難した奴らに町中で会うんじゃないかと、保険会社に電話すると、調書はいらないとのことだったので、夕方もらいにいく事は辞めた。

最低限必要なもの、パンツ1枚、靴下2足、歯ブラシ、タオルだけを買った。この後、これだけで旅をした。鞄はなくビニル袋2重で。何も持たずに旅をする事はこんな状況にでもならなければしないだろう。だからこそ経験できたこと、そして気づいた。何もまとわないって、身軽だと。心が解き放たれたような旅になった。荷物を持たない事で心が解放され、心の扉がさらに開いた気がした。

ホテルで寝て、夜はサンドイッチを2、3個食べて、寝た。こんなことがあったから、寝付きが悪いかと思ったが、すぐに寝れた。相当疲れていたのだろう。

ちなみに、イランの警察署ではチャーハンが出てきた。カツ丼ではなくイランの警察はチャーハンのようだった。

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