日別アーカイブ: 2008/10/24 金曜日

悪人正機 吉本隆明 糸井重里 新潮文庫

悪人正機 吉本隆明 糸井重里 を読み終えた。
非常に面白く、ドッグイヤー(本の角を折ること)をつけすぎてしまった。

様々なテーマについて、吉本さんが話していて、どのテーマも非常に興味深いので何を書こかうか迷ってしまう。
実に面白かった。吉本さんの考え方(主要な著書は読んだことがないが)は、視点が非常に面白い。今まであまり耳にしなかったような物事の捉え方をするが、どれも本質を着いているように思う。

本の構成に関してはさすが糸井さんと思わせてくれる。
「国際化」ってなんだ?とう章があると、はじめの1ページに糸井さんが吉本さんの話を聞いて感じたことと、吉本さんの話の要点がまとまっている。その後に、「国際化」について吉本さんが話したことが書かれている。ただ、糸井さんと吉本さんの対話形式で書かれている訳ではなく、吉本さんが語り続けているように書かれているので、(個人的に)読みやすい。対話形式の本だと、あっちいったり、こっちいったりで読みづらいのだ。

ここは、あえて「病院からもどってきて」という、最後のオマケのような章を取り上げる。

意識でもって鍛えたってしょうがない、ということがわかっているのでしょう。無意識の使い方が上手というか、-中略-自分でも、やっぱり意識的なものは、力にならないなぁと考えているし、無意識のうちにやれるようになれば、それはもう、ちょっとしめたものなんだと思っている

この部分を読んで、いくつか思い出した。「無意識下における情報処理の量が頭の良さを定義づける」と3年半ほど前に思いついたことや、「いざという時に考えたら死ぬよ」と言った、船で冒険する人(名前を覚えていない)の言葉を思い出した。

僕自身の仕事のうえでは、「自分はこういう方向で行くんだ」というように決めつけるとあぶない、という気がしています。-中略-「自分に対する自己評価、みたいなものがあるとすると、その自己評価よりも下に評価されることなら、何でも、やっていいんだ」と、ぼくはある時から、決めちゃったんです。-中略-「どんな仕事でも、とにかく毎日十年やったらモノになる」と言いましたが、十年以上やっている人は、まず、「自己評価が正確である」と言えるんです。

大学の同級生でどうしようもなかった友だちが、大きな一部上場企業の社長になり引退した。彼の唯一良いところについて。

要するに、そいつは、「逸らさない」んだよなぁ、と思いました。つまりバカな話であろうと、そうじゃない話だろうと、こいつは、逸らさない。人を逸らしたり、逸らした言い方をしたり、そういうことはないんです。-中略-きっと、下の人にも上の人にも、いろいろな面で、あいつなら、「逸らさない」だろうなあ、と思えるんです。逸らさないで真っ正面から・・・・・えっと、「大真面目」という意味では、ぜんぜん、ないのですけれども、

つまり、落ちこぼれると、その分だけ自由が手に入るんです。

人にいくら話を聞いても、宗教家から言葉でいくら解説を受けたとしても、そこに生きていたときの精神内容は依然としてわからない。それをわかるには、そこに生きていた人と同じことをやるよりしょうがねえ、みたいなね。

PS
開高健さんの知的経験のすすめと似ている部分がいくつかあった。
この本で吉本さんが言っていたことと、開高さんが書いていたことが似ている気がした。手や足を使えとか、終戦の話とか。

送信者 いろいろ

[物事にはいろんな見方、見え方があるんだよなぁ](PENTAX K10D DA18-55mm ISO: 400 露出: 1/10 sec 絞り: f/4.0 焦点距離: 28mm)