多くは語れない新城島(パナリ島) その1

前回の旅日記はこちら「何もない島 黒島」

この旅に出る前は、今回のメインは新城島(パナリ島)だと確信していた。
パナリは調べれば調べるほど、よくわからない不思議な島だ。
情報が少ないことももちろんだが、独特の不気味さがこの島を包んでいる。
いろいろな話を聞いたり、読んだりすることで自分の中でできた恐れがそう思わせたのかもしれない。

この島は、そんな色々な噂はさておき、いい島だ。
どんな離島も観光地化してしまった沖縄においても、のどかさを残し続けている島。
沖縄「最後の離島」といってもいいかもしれない。

それは、交通手段がないということが大きい。
定期船がないので、簡単には行くことができないのだ。
住民は3人とか5人とか。

実際に石垣から新城島(パナリ島)に向かう時も一悶着あった。
泊まる所のおじぃを説得し、なんとか足を確保した。

新城島(パナリ島)に降り立つと、おばぁが迎えにきてくれていた。
石垣島とも波照間島とも黒島とも全く違う時が流れていた。
当たり前と言えば、当たり前だ。
人が数人しか住んでいないのだから、流れる時間も空気も異なる。

荷物を置いて、パラついていた雨もあがったので島の中を歩くことにした。
地図もあるわけないし、さらに入っては行けない所があると聞いていたので一人で歩き回るのは躊躇したが、この島では海で泳ぐことかほっつき歩く以外には何もすることがないので、ちょっと歩くことにした。
家が10軒程度だろうか、かたまって建っていた。
しかしほとんどの家は誰も住んでいない。
が、手入れが届き廃墟という感じではない。
祭りのときに戻ってくるためにきれいにしてあるようだ。

家の周りを抜けると、大きく二本の道しかない。
おそらく南へ向かうであろう道とおそらく東で向かうであろう道。
アスファルトの道がこの島にあるはずもなく、土の一本道だ。
もっと言ってしまえば、この二本の長い道もなんであるのかが分からない。
道の両脇は木や雑草が生い茂っている。
右折も左折もする場所は一カ所もなく、ただまっすぐ海まで続く道。
ただ、家の周りや海岸沿いの近く、そして道の途中に御嶽が何カ所かあった。
不思議だが、これが道がある所以なのかもしれない。

まあ、この話は置いといて。
道をしばらく歩いていると、何か気になった。
2本の木に浮きがくくりつけてあった。
そこは木や雑草がちょっとだけ少ない場所だったのだ。
とは言っても、そこを通れば確実に木にぶつかり、雑草をかき分けなければならない。
行こうかどうしようか迷った末、ここまで来たんだし行ってみることにした。
かき分けながら進むと、浜に出た。
そんなこと想像していなかったので、驚くとともにワクワクした。
誰も知らない俺だけの浜。
自分にとっての秘密基地を見つけたみたいな気持ちになった。

ひとまず戻ろうと思い、道を歩いていた。
雨も上がった空を見上げると、虹がかかっていた。
半円をきれいに描くパーフェクトレインボウ。
ひとつながりに続く虹。

いったん戻り、友達とこの浜へ再度来た。
浜に出るために、かき分けていく場所をさして友達は言った。
「よくこんな所、一人で行こうと思ったね。」
確かに、言われてみれば、その通りなのだ。

浜で大きくきれいなシャコ貝の殻を拾った。
シャコ貝にしては小さいのかもしれないが、一般の貝と比べると比較にならないほど大きく、そして重い。
ひとつの貝を友達と分け合った。

それから、東へ向かう道へ向かった。
この道をチョウチョ通りと名付けた。
何と言っても、実に蝶が多い。
そこら中に飛んでいる。
ここまで多くの蝶が飛んでいるのを見たのは生まれて初めてだ。

ひらひらと青や白やオレンジの蝶が舞っている。
蝶のひらひら、ふわふわとした舞いは、いかなる生き物や機械の動きとも異なり、別の世界の生き物な気がする。
そして、そんな蝶の群れの動きしか見えない所にいると、別世界に自分もいるような錯覚にさえなった。

このチョウチョ通りで、蛾と蝶の違いを聞いた。
ガは羽を広げて休む、蝶は羽を立てて2枚あわせて休む。
ああ、そうかと、驚きととともに知った。

チョウチョ通りの先まで着くと海があらわれた。
溶岩のような黒い岩がごつごつした海岸。
ちょっとした砂浜では、4、5匹のヤドカリが宿の奪い合いをしていた。
ヤドカリの宿奪い合いバトルの鑑賞を楽しみ、また今日泊まる家に戻った。

食事をとった後、泊まっていたご夫婦とおじぃ、おばぁと話した。
ご夫婦は毎年この島に来ているという。
一番落ち着くのだ、と。

おじぃはいつの間にか三線を手に取り、歌い始めた。
おばぁも歌い始めた。
外は真っ暗で、他のどの家の明かりもついていなければ、物音もしない。
こんな島、白熱球の下で、おじぃの八重山民謡を聞くと、何十年も昔の沖縄に来ている気がした。

三線を味わった後、夜の散歩に出かけた。
海辺に行き寝転がり、星空を眺めた。

僕はどこかに出かけると、大の字で寝転がる。
その土地と全身の感覚でふれあう。
これが何とも気持ちがいいのだ。

波の打ち寄せる音に耳を傾けながら、少し冷たい海の風を肌にあびながら、星空を眺めた。
満天の星空には時より星が流れ、僕にささやかな幸せを与えてくれた。

戻って寝ることにした。
部屋には蚊帳が張ってあった。
その時に蚊帳の中で寝ることが初めてであることに気づく。
蚊帳の中に入り、板の間にゴザとタオルケットで眠りについた。


旅の続きはコチラ多くは語れない新城島(パナリ島) その2


沖縄(八重山/新城島(パナリ島))旅の写真はコチラ

http://teratown.com/OKINAWA2008.html

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