ムーン・パレス ポール・オースター 柴田 元幸訳

「ムーン・パレス」ポール・オースター 柴田 元幸訳

この本はかなり前から知っていた。知ってただけではなく気になっていた。
面白そうだなと漠然と思ってはいたものの、どちらかというと小説はあまり読まないし、
さらには外国の小説は名前がややこしく登場人物の整理ができずに理解できないことが多い。
結果として楽しめず、外国の小説はあまり読んだことがない。

そんな僕があまり手を出さないジャンルの本を読むきっかけは、沖縄の旅だった。
僕は旅に出る前に、友達にお勧めの本を聞く習慣がある。

今回もご多分に漏れず、友達に聞いた。
そして、かえってきた答えが「ムーン・パレス」だった。

ちょくちょく読む雑誌coyoteでも最近特集されていたので、僕が好きな部類の本だろうとは思っていた。これも、この本を手に取った理由だ。

結果的には旅先ではこの本を読んでいない。
沖縄には持って行ったのだが、この本は読まなかった。
沖縄から帰ってから読み始めた。

最初の何十ページか読んだところで、面白いと思った。
これなら、最後まで読めるんじゃないかと感じた。
何と言っても書き出しかがいい。

「それは人類がはじめて月を歩いた夏だった。そのころ僕はまだひどく若かったが、未来というものが自分にあるとは思えなかった。僕は危険な生き方をしてみたかった。とことん行けるところまで自分を追いつめていって、行きついた先で何が起きるか見てみたかった。・・・」

主人公の破天荒さ、だらしがなさ、そしてやさしさ、不器用さ。そんな性格が僕にはしっくりきた。
危なっかしい、綱渡りな人生、でもそこには人がいた。実は身内がいた。
キティがいた。エフィングがいた。バーバーがいた。

ありえないような偶然の出来事、そして出会いの連続だ。
僕が生きる現実世界との乖離から、ややもすると嫌気がさしてしまうのだが、そうはならなかった。
自分の周りの世界でも気づいていないだけで、実はそんな偶然のような出来事や出会いに満ちあふれているのではないか。
そんな風に思わせてくれた。
なんだか日常の何気ない出来事や出会いに、もうひとつ意味があるかもしれないという一筋の光をくれた。

もちろん、登場人物が少なくて理解しやすかったこともあるし、訳が非常に良いことも理由だろう。
まあ、あまり内容を書いてもしかたないので、僕がこの本を好きになったことだけを記して終わる。

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